ベネズエラ:10月サプライズ

  • 2020.09.03 Thursday
  • 06:05

ラテンアメリカ・アナリストで、コードピンクの活動家であるレオナルド・フローレス氏の分析です。


ベネズエラの10月サプライズの舞台が準備されている

The Stage Is Set for a Venezuela October Surprise

2020年9月1日 venezuelanalysis(By Leonardo Flores - CODEPINK)発

米国のベネズエラに対する攻撃は最近数週間で激化しており、すべての兆候が米国とベネズエラの選挙前のエスカレーションを指している。

President Trump at a July briefing at Southern Command Headquarters in Miami. (Archive)

マイアミの南方軍本部で7月の概況説明をするトランプ大統領。|写真:(Archive)

 

 米国の大統領選挙が熱を帯びるにつれて、ベネズエラに対するハイブリッド戦争が強まっている。トランプ政権およびベネズエラ人の仲間、並びに国際同盟は10月サプライズ、すなわちトランプ大統領の再選を後押しすることを狙って米国あるいはその代理人の一つによる攻撃の可能性のための舞台が準備されている。ベネズエラへの攻撃は、明白な軍事的圧力、経済的圧力、極秘作戦や偽情報キャンペーンなど他面的に実行されている。これらすべては過去数年間にニコラス・マドゥーロ大統領政府を打倒しようとするハイブリッド戦争の要素であり、まさにベネズエラがCOVID-19感染者の急増と闘っている時に、最近数週間にそれぞれの要素に新たな進展が見られる。

 

【公然の軍事的圧力】

 

 ベネズエラの沿岸に配備された米国海軍はこの地域での5ヶ月目の作戦を開始しようとしている。トランプのベネズエラ政策を批判する意志を持つ数少ない民主党の議員ですらこの配備について何も言わない。たぶん、ある国を戦争で脅し、海軍を外国に配備することが米国にとっては完全に普通のことだからだろう。これはペンタゴンの浪費の実例として容易に利用出来るものなので、民主党の沈黙は残念である。米国へのコカイン搬入の84%が太平洋ルートであるのに、カリブ海への大規模な「対麻薬」作戦の展開は、軍事支出を削減する議論において容易に成果を上げられる可能性がある。

 コロンビアでは、イバン・デューケ大統領が安全保障補佐官ロバート・オブライエンおよび米国南方軍司令官クレイグ・ファーラーと8月18日に面会し、オブライエンによれば「農村地帯の発展、インフラの拡大、安全保障と法の支配に焦点を当てた」数十億ドルの計画、コロンビア成長イニシアティブを彼らは発表した。米国当局者訪問から2日後、デューケはイランから中長距離ミサイルを入手しようとしていると何の根拠もなくベネズエラを非難した。イランとベネズエラ両国はこの主張を否定した。

 コロンビアの領土内で外国の部隊の配備に関して憲法的に疑義があるという観点からこれまでそのような作戦は停止されていたが、8月27日、コロンビアの裁判所は米国軍部隊に「助言任務」の再開を許可した。特殊部隊支援旅団というこの部隊は「プロの軍事力を構築する」目的で作られている。元安全保障補佐官ジョン・ボルトンがすべてを打ち明けた彼の著作の中で、コロンビアの「部隊はマドゥーロ軍との通常の紛争の準備ができていない」と2019年2月に学んだと主張していることは注目に値する。

 ベネズエラの南の隣国ブラジルもまたこのエスカレーションに関わっている。ブラジル空軍は8月17日から9月4日まで軍事演習を実施している。この演習は反乱軍や民兵組織との非通常型戦闘のための訓練だと報告されているが、ブラックホークや戦闘機も参加している。

 

 ブラジルとコロンビアは米国と軍事問題に関して密接に協力している。7月のマイアミでのイベントで、トランプ大統領はファーラー最高司令官からコロンビアの准将ファン・カルロス・コレアとブラジルのデビッド少将を紹介され、ファーラーは彼らを「(自分のために)働いてくれる」と紹介している。元ブラジルの大統領ルラ・ダ・シルバは、ブラジル軍が非干渉と人民の自決という憲法原則に合致しない行動のために使われる可能性がある」という警告を表明している。

 

【経済的圧力】

 

 経済面では、米国は8月14日にベネズエラが購入した2隻の燃料タンカーを略奪した。この海賊の厚かましい行動は主要メディアではほとんど注目されることはなかったが、ベネズエラ経済を窒息させる戦略の一部である。それによって製油所に必要な化学添加物やスペアパーツを輸入することが困難となりガソリン不足に直面している。現在、トランプ政権は、石油会社レリアンス、レプソイルとエニがベネズエラと実施している原油・ディーゼル交換に関する制裁免除を終了させることを検討している。ディーゼルに対する制裁はベネズエラの農業、輸送、医療やエネルギー産業に広範囲に影響を与えることになる。食品の出荷に使われるトラックと人々を運ぶバスは両方ともディーゼル燃料に依存している。全国の病院も電力供給の不安定さを乗り切るためにバックアップ・ディーゼル発電を頼りにしている。ベネズエラ西部では地元の電力のための発電所ではディーゼルが一般的に使われている。

 このディーゼルの制裁免除は11月早々に終了させる予定であり、トランプ政権はこのような交換を段階的に縮小するようにその会社に指示し、経済学者フランシスコ・ロドリゲスらのベネズエラ野党の著名なメンバーからの批判を受けた。ロドリゲスは「人命を犠牲とする」「明白な選挙対策」として制裁免除を特徴づけている。制裁が体制転覆につながらず、普通のベネズエラ国民を罰しているため、野党は制裁を批判し始め、野党内の分裂の主要な推進力の一つになりつつある。

 

【極秘作戦と犯罪による混乱】

 

 2018年8月のマドゥーロ大統領暗殺未遂、2019年3月のベネズエラの電力網へのサイバー攻撃、2020年5月の元グリーンベレー隊員と傭兵らにより侵入の試みに米国がどの程度関与していたかは分からないかもしれないが、米国諜報機関と特殊部隊が無駄に待機していると考えることは不誠実であろう。ベネズエラでは、過去数週間に起きた幾つかの犯罪は混乱をまき散らす計略の一部ではないかという懸念が高まっている。

 その意見を確認する手段はないが、ありそうになくはない。軍事アナリストのフランク・G・ホフマンは、ハイブリッド戦争は「無差別な暴力と強制、犯罪による混乱などの通常の能力、規格外の戦術やフォーメーションを含む戦争の様々な範囲の形態を組み込む」ことができると述べている。この1例が5月の侵入未遂の週末に発生した。その時ベネズエラ最大のスラム街ペタレで集団暴力事件が発生した。逮捕された傭兵の一人は後で侵入の煙幕として麻薬取締局からその行動に対して「発砲代金が支払われた」と主張している。

 現在の懸念は、8月8日に象徴的な革命の指導者の失踪に始まった一連の犯罪である。この後、8月20日に有名な左翼の芸術家が不可解な状況下での死があり、8月21日には二人の左翼の通信労働者が警察によって殺害された。当局はこの3つの事件の捜査を続けているが、最後の事件では、8人の警察官と地方弁護士が殺害と隠蔽容疑で起訴された。司法長官タレク・サーブは起訴された9人は犯罪を犯すために警察に入った「潜入者」と呼んでいる。これらの事件は犯罪による混乱を引き起こす計略に関係しているかどうかに関係なく、彼らはベネズエラ人民に心理的な危害を与えている。

 

Pictures of gang members holding bazookas released on social media after police confrontations. (davidglock_)

警察との対立の後、ソーシャル・メディアに投稿されたバズーカ砲を持っている集団に一員の写真。|写真:(davidglock_)

 

 これらの犯罪に加えて、警察と充分に武装した犯罪組織の間の暴力的な衝突が繰り返し発生した。8月25日には、AR-15、AK-103やFN-MAGマシンガンで装備した集団が警察の武器庫を奇襲した。上の左の写真は集団の創設者の一人が衝突の際にバズーカ砲を持っていたと言われている。クーデターの陰謀と関連した兵舎や武器庫への攻撃が2017年以来数回発生しており、突撃ライフル、重火器、手榴弾や盗まれ、その他の爆発物が犯罪者の手に渡ることになってしまった。

 

【ソーシャル・メディアの閉鎖】

 

 ハイテク大手企業がトランプ政権の最大圧力キャンペーンに加わりつつあるようだ。3月に、コロナウイルスのパンデミックがベネズエラで始まった時に、ツイッター社は、COVID-19対応の担当者だった保健相やデルシー・ロドリゲス副大統領などの高官、国家機関、ジャーナリストや影響力のある人物の40件のアカウントを停止した。すべてではないが、そのほとんどのアカウントは回復されているが、ツイッター社はその行為に関して何も説明していない。

 8月19日には、この国に関する最も重要な英語版ニュースサイトの一つベネズエラアナリシスのアカウントを制限した。グレイゾーンのベン・ノートンが指摘しているように、これらは「ワシントンの戦争前の談話とは矛盾する」報告である。この停止はハイブリッド戦争のメディア部門のエスカレーションを示している。8月21日には、グーグルはベネズエラ国営TV放送局VTVが持っていた3つのユーチューブとGmailアカウントを閉鎖または消去し、ライブニュースと2011年からVTVがアップロードしてあった68,000本の動画をベネズエラの人々がアクセスするのを阻止した。

 

【偽情報キャンペーンとCOVID-19】

 

 これらの閉鎖のタイミングは興味深く、ベネズエラのCOV-19対策に関する偽情報キャンペーンが進行中のまさにその時に発生している。ニューヨークタイムズやその他のメディアはベネズエラの移民の帰還の窮状についての物語とパンデミックと闘うためにベネズエラ政府が取ったことになっている極端な措置について報道している。

 これらの記事に欠けていることは、パンデミックの開始以来、ベネズエラは13万人の移民の帰還を受け入れているという事実である。ほとんどの国が国境を閉鎖し、世界中で人々にとって祖国への帰還が困難になっている時に、ベネズエラはパンデミック中に膨大な人数の人々を受け入れている唯一の国であるかもしれない。帰還したベネズエラ人のうち9万人は公式チャネルを通じて入国しており、彼らはすぐにCOVID-19の検査を受けている。その後、ほとんどは検疫プロトコルに準拠した包括的ソーシャル・ケア・ポイント(PASI)に送られている。PASIで、コロナウイルスに感染していないことを確認するために2、3週間(陽性の場合は滞在が延長される可能性がある)待機するが、移民たちは食料、医療や個人用衛生用品を受け取っている。

 その他の4万人の移民は公式ルートを経ないで帰国し、医療と移民の管理を省略した。5月後半、2か月間のパンデミックの統制の後、ベネズエラはCOVID感染者の急激な増加を経験した。この増加のほとんどは、健康の警告に注意を払わなかった移民によるものである。ある時点で、ベネズエラの新しい感染者の80%は海外から輸入されたものだった。6月中頃、その数字は急速に反転し、コミュニティの感染は急速に拡大した。

 コロンビア国境側の悲惨な状態や国境を越えることができる日毎の人数が制約され、入国に長時間待たされるなどの、移民が公式の入国ポイントを避けたい十分な理由があった。しかしながら、移民の多くはフェイクニュースの被害者だった。テレスールのマデレイン・ガルシアが帰国中のベネズエラ人にインタビューすると、医者の給料が患者数の歩合制なのでベネズエラは移民にCOVID-19を注射しているとか、移民は食事も与えられずにPASIのケージに閉じ込められるといった嘘がコロンビアで話されていると答えている。

 特定のPASIがひどい状態にあるというソーシャル・メディアの情報があるが、それは決まったものではなく、例外のようだ。国連人道問題調整事務所の報告では、200以上のPASIの違いを指摘し、大学やホテルにあるPASIは小学校や体育館にあるPASIよりも優れたインフラを持っており、そのうちの幾つかは「サービス提供能力を強化するためにより大きな支援が必要である。」と報告されている。国連と国際赤十字(ICRC)がPASIを訪問し、一時的に隔離されている移民たちに援助を提供している。政府と地方当局は提起的にPASIを検査しており、ベネズエラのメディアはそこから報告している。プログラムの広大さや制裁によって経済的に窒息させられている国にとってのパンデミックとの闘いという難題に直面している状況を考慮することなく、PASIはメディアでひどく中傷されている。

 COVID-19とベネズエラ移民に関する主要メディアの筋書きは、同国を人道的介入が必要な存在であると示すために使われている。実際、トランプ政権と戦略国際研究センターといったシンクタンクが「ベネズエラ:崩壊する麻薬国家におけるパンデミックと外国介入」と題された報告を発表し、ベネズエラのCOVID-19対応を地域的な安全保障問題に変えようとしている。ワシントンにあるNATOのシンクタンクと見られているアトランティック・カウンシルは、8月13日にファーラー最高司令官と一緒にイベントを開催し、そこで彼はマドゥーロ政府は民主主義、経済的安定性およびCOVID-19対応に対する緊急の脅威だと宣言した。

 

Covid-19 cases per million population. (Coronavirus Country Comparator)

人口100万人当たりのCOVID-19感染者数。|写真:(Coronavirus Country Comparator)

 

 上のグラフのように、ベネズエラがCOVID-19の脅威だと主張することは馬鹿げたことである。この国は病気の蔓延と死者数の両方を統制するうえで近隣諸国よりもはるかに優れている。ベネズエラではCOVID-19による総死者数は358人で、人口100万人当たり13人の死者率である。(アルゼンチンは南米では2番目に低く、100万人当たり180人の死者である。)7月から8月中旬にかけて感染者数が急増した後、新規感染者のカーブが平坦化したように見えるが、そう言うには時期尚早である。ベネズエラは政策選択とキューバ、中国、ロシア、ヨーロッパ連合、ICRCや国連機関のタイムリーな援助のおかげでこの嵐を乗り切ることができた。

 もちろん、ベネズエラに対する軍事行動はパンデミックに対処する能力を破壊しないまでも妨げることになろう。それがもし戦争難民の波となれば、ブラジル、コロンビアなどの他国での感染の拡大に繋がる。これらの懸念は、第2次トランプ政権やバイデン政権が選挙前の攻撃よりも政権転覆をもたらす可能性が低いと見ているベネズエラのタカ派の次である。

 ラ・ポリティカ・オンラインに語った情報筋によれば、ベネズエラに対する軍事行動が「11月のフロリダの選挙人団を確実にする」とマルコ・ルビオ上院議員がトランプ政権にアドバイスしている。これらの主張は独自に検証されておらず、ルビオ上院議員もその件にコメントしていない。しかしながら、トランプのタカ派的なベネズエラ政策はフロリダで勝利しそうということを根拠にしており、すでに述べたイベントの多くは、2017年8月以来、彼が脅してきた軍事的選択肢を大統領に与えるために実施されてきた。もしトランプの再選の可能性が薄暗くなった場合、悲惨な10月サプライズの舞台が準備されている。

 

レオナルド・フローレスはラテンアメリカ研究者で、コードピンクの活動家である。

原文URL:

https://venezuelanalysis.com/analysis/14983

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趣旨

今、ラテンアメリカでキューバを先頭とする社会主義、ないし社会主義を志向する大衆闘争が注目です。特に、昨年末(2015年)アルゼンチン、ベネズエラで右翼が勝利し、米国に支援された反動右翼と進歩的な人民大衆との熾烈な階級闘争が繰り広げられています。日本のマスコミは歪められたものしか報道していません。 だからこそ今、目の前で闘われている大衆闘争について現地の報道機関やブログで報道されているものを日本語にして日本の労働者に紹介していくことは、国際連帯としても日本での民主主義を闘いとる闘争にとっても有意義なことであるように思います。

おことわり

このブログでは英文記事を翻訳してご紹介しておりますが、筆者はかなずしも英語に堪能であるわけではありません。 従って、多々誤訳等があるかと思いますが、ご容赦願います。

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