ベネズエラ:包囲攻撃下のベネズエラ経済

  • 2020.06.23 Tuesday
  • 05:47

元経済生産担当副大統領が、現在のベネズエラ政府の経済政策はチャベスが描いたものとは逸れつつあると指摘している。


包囲攻撃下のベネズエラ経済:ルイス・サラスとの対談

Venezuela’s Economy Under Siege: A Conversation with Luis Salas

2020年6月19日 venezuelanalysis(By Cira Pascual Marquina)発

 

厳しい制裁に直面している時に、ドル化へ向かう一般的な傾向を含む政府の政策を経済論客が検討する。

 

Luis Salas (Venezuelanalysis)

写真:Luis Salas (Venezuelanalysis)

 

 元生産経済担当副大統領ルイス・サラスはオンライン・ジャーナル『15 y Ultimo』の設立者で経済シンクタンク『Vortice』のメンバーの一人である。彼はこの国の多くの経済分析で有名であり、いつも注意深く実証している。ベネズエラアナリシスとのこのインタビューで、サラスは、複雑な経済的シナリオの中で経済的自由化に向かう政府の全般的な傾向を検討する。

 

【米国の封鎖を破って、イランの石油タンカーがベネズエラに到着したことは世界中の注目を集めました。この出来事がどれほど重要であるのか、またあなたはガソリンの新しい配給制度をどのように解釈していますか?】

 

 何よりも第一に、イランのタンカーが到着したことは重要な地政学的出来事である。米国によって封鎖された2国が、包囲攻撃下にある2つの国家が制裁と封鎖を乗り越えることに成功した!途中、イランのタンカーはホルムズ海峡にいる米国の艦隊とベネズエラ沿岸の海上封鎖を回避しなければならなかった。実際に、米国からの脅迫があった。地政学、戦略地政学および経済的地政学の観点から、我々はこれを勝利と呼ぶことができる。

 新しいガソリン流通制度に関して評価するのは早すぎる。シフトには配給(1台当たり1ヶ月140リッター)ガソリンの補助金の値上げと割当てではないガソリンのドル化(1リッター当たり0.5US$)がある。新しい流通制度の初日は完全にトラウマだった。中央政府からいつも優遇されているカラカスでは現在の状況は正常であるが、他の地域ではガソリン購入のための長い行列はそのままである。

 価格の値上げが他の商品や公共料金の与える影響はまだ見守る必要があるが、新しいスキーマがドルにアクセスできる人とアクセスできない人の格差を広げることは間違い無い。

 この状況を考えれば、政府の優先課題は公共料金の調整ではあり得ないというのが私の見解である。最低賃金が約5US$で、ほとんどの公務員が約10US$しか稼げない国で価格の国際化はやるべきではない!

 

Oil production curve. (EIA)

写真:Oil production curve. (EIA)

 

【ニコラス・マドゥーロ大統領のドル化に対する態度は変わりつつあります。2年前の大統領選挙では、この国をドル化することを提案したエンリ・ファルコン候補をマドゥーロは厳しく批判しました。しかし、数ヶ月前、ドル化プロセスが進行していることについて次のように彼は話しています。「私はそれを否定的に見ていない(…)。それは、この国の生産力の回復と発展、および経済の活性化(…)に役立つかもしれない。起きつつあることに神に感謝します。」これは戦術の変更を反映したものですか、それとも敗北ですか?】

 

 私の政治的・経済的状況の分析では、潜在的に個人やグループの利益が染みこんでいることが多い、政治家の発言ではなく、彼らが行っていることを読もうとする。

 起きていることは政府が自由放任主義のドル化を許可していることである。ハイパーインフレと流通通貨の不足(ある程度は財政金融政策のせいで)がプラスして経済は事実上「非ボリバル化」(ベネズエラの国民通貨ボリバルの使用が自然発生的に減少していくプロセスをいうサラスによる造語)されている。その後給料やサービスをドルで支払うことを許可する最高裁の判決が出された。(2018年12月、判決884)

 この傾向はますます顕著になっている。そしてこれは、あなたが言及したドル化プロセスをマドゥーロ大統領が公然と祝福したことと歩調を合わせている。

 政府は米ドルの市場変動に基づいて毎週「合意価格」を調整することによって経済のドル化を暗黙のうちに承認している。当然、補助金なしのガソリンをドルで販売することも考慮にいれる要素の一つである。

 これすべてが支払い単位としてドルが暗黙のうちに認められていることを意味している。このプロセスの政治的側面は最高裁が推進し、後に制憲国民議会(ANC)が承認した経済緊急事態法の枠組みに組み込まれている。それは経済問題に関して大統領に特別の権限を与えている。これは重要な問題である。なぜなら、憲法によればベネズエラの唯一の法定通貨はボリバルであることを、2年前の大統領選挙でマドゥーロ自身が指摘しているからである。

 もちろん、ベネズエラで今何が優勢であるか、憲法、あるいはマドゥーロ大統領に特別な権限を与えているANCに関してオープンな議論が可能かもしれない。私の理解するところでは、価格のドル化は違法であり、さらに悪いことに、ドルにアクセスできる人と単に給料だけで生活している人の間の格差を広げることになる。

 それでも政府がドル化へ向かって進んでいることは間違い無い。そしてこれはチャベスの経済・金融政策からひどく逸れて行くことを表している。これは戦略的なシフトなのか?私には分からないが、政府がドル化プロセスを公然と進めるのか、それとも将来このプロセスを全面的に正式なものにする政府になろうとしているのか、今議論の余地がある。

 

The dollar now is regularly used for purchases. (Tatuy TV)

写真:購入のためにドルが普通に使われている。(Tatuy TV)

 

【秘密の民営化プロセスが進行中であるという沢山の話しがあります。石油部門では「戦略的同盟」が締結されていますが、我々がガスや都市清掃サービスのような公共事業が民営化されるのを見ています。一方、国営企業の「非効率性」が暗黙の民営化のための口実となっています。これらのプロセスについて話していただけますか?】

 

 進行中の民営化プロセスは公然の秘密である。それは経済緊急法の道筋を通じて進行している。しかし、民営化のより「伝統的な」プロセスとは反対に、公開入札なしで進んでいる。

 例えば、約3週間前に実施された新しいモデルでガソリンの流通が民営化された。また、幾つかの地域では、これまでPDVSAガスの管理下にあった調理用ガスの配給が民間の手に渡り、同様のことが電気でも起きている。

 多くの国営企業が民営化された。一例は、食品流通の公共ネットワークだったメルカルPDVAL・アバストス・ビセンテナリオである。この公共流通ネットワークのインフラは民間企業の手に渡され(公開入札なしで)、コロンビアのコングロマリッド所有の「CLAPストアー」と呼ばれるものになった。(政府の食料ボックス・プログラムCLAPと混同しないように)

 他にも、食品加工から不動産まで多くの民営化の実例がある。

 ベネズエラには民営化プロセスがあることは秘密ではない。それは最初は隠されていたが、今では一層あからさまになっている。実際、多くの政府高官は経済への国家の参加を減らし、民間の参入を増やすことに賛成であると発言している。

 大臣、制憲国民議会議員や知事の口から資本主義部門の要求を聞くことができる。メディアをチェックしている人は誰でもこの言説と政策シフトの目撃者である。

 

【チャベス主義機関の特定の部門には、チャベスが大統領時代に巨大な石油大当たりを乗り切ったという神話があります。これは民営化プロセスと進行中の構造調整を正当化する議論になっています。石油ブームは重要ですか、それはチャベス・プロジェクトを理解するために重要ですか?】

 

 チャベスが大統領だった数年間、石油の輸出から重要な通貨収入があったこと、しばらくの間、石油1バレルが100US$を越えていたことは事実である。しかしそれは普通ではなかった。

 チャベスが1999年に大統領になった時、石油価格は1バレル当たり約10US$であり、その後ゆっくりと上がっていった。2007年から2011年頃の間は1バレル100ドルを超えた。しかし、チャベス時代の平均的な石油価格は約55US$であるが、チャベスの重要な社会構想は石油価格が全く低い時でも進められた。例えば、石油1バレル約27US$だった2003年頃に実施されたバリオ・アデントロ・ミッションを考えてください。だから、チャベスの政策を石油価格と直接関連付けて説明する人は物事を正しく理解していない。

 また、世界的なインフレのような要素を考慮した「実質価格」を検討すれば、ドルの購買力を比較して見た場合、2000年代のドルは70年代のドルの購買力の5分の1に過ぎないことが分かる。さらに、ベネズエラの人口は70年代から2倍以上に増えている。

 実質的に、ベネズエラの歴史上本当の経済的ぼろ儲けはカルロス・アンドレス・ペレスの1期目政府の70年代にあったことをこれは意味している。こう言うことによって、チャベス政府が石油の高価格の時代の恩恵にあずかっていた事実を隠すつもりはないが、我々はこの状況をもっと幅広い視野で見るべきである。結局のところ、チャベスの現代的なこの解釈は狭量で自分勝手である。すなわち、それは財政調整やその他の伝統的な政策を正当化するために利用されている。

 

【地球上で最も活発な鉱山活動をしている地域の一つとなった国で現在金ブームがあります。これらの天然資源はどのように管理されていますか?】

 

 ある時点で、政府はオリノコ鉱山地帯で金の探索を進める多大な努力をしたが、制裁がこの取り組みに悪影響を与えている。それでも、ベネズエラが石油の埋蔵量が世界一であることに加えて、巨大な金埋蔵量を持っていることは本当である。私の見解では、これらの資源の合理的な使用に基づく部分的な一つのモデルを発展させることは可能だ。しかしながら、制裁と金開発にまつわる腐敗した論理が本当の問題である。

 その件では、ベネズエラ政府は労働者階級を擁護するが、実際には石油輸出の代替えとしての従来のモデルに向かう傾向がある。このモデルは表向きは経済の多様化を目指す発展という「ポスト・レンティア」の概念に触発されている。

 非石油輸出国へのシフトの試みは世界で最低レベルの最低賃金を維持する政策を部分的には説明している。議論は次のようになる。すなわち、経済特区(民間投資へ対して、特別の法的安全保障、免税などの、あらゆる種類のインセンティブを提供する)と共に安い労働力が世界市場でベネズエラを魅力的なものとし、国際投資の磁石になる。言い換えれば、2016年に経済原動力(観光業から、軍事産業や銀行業などまでの14部門の経済発展)を立ち上げて以来、特に2018年以来、公式の目標は商品輸出のセンターになることだった。

 

【チャベスの経済政策とマドゥーロのそれを比較するとどのようになりますか?】

 

 マドゥーロ大統領が厳しい制裁に直面していることは事実だが、チャベスの大統領時代の政治的経済的環境を描く上でバラ色の絵を描くのも間違っている。チャベスは短期間だが成功したクーデターや度重なるクーデター未遂、石油が低価格だった長い期間、実質的に石油生産がゼロになったロックアウトなどを生き抜いてきた。

 しかしながら、彼の大統領時代は、社会に強く焦点を当て、労働者の給料を守る恒久的な約束、コミュニティと労働者への権力の移転、物価と通貨統制による経済における国家の役割の強化、国有化の重要性の設定などで特徴づけられる。最後に、チャベス大統領の最後の3年間には、コミューンやその他の新しい経済主体を支持する確固たる約束があった。

 これらがチャベスの経済(および社会)政策を特徴づける重要なものであるとすれば、現在に政府は全く違う方向に進んでいると言うことができる。

 

Venezuela’s GDP curve. (Statista)

写真:ベネズエラのGDPの推移。 (Statista)

 

【ベネズエラの現在の危機から脱却するためにどんなことを提案できますか?】

 

 私の見解では、ベネズエラを輸出ハブに変えるという考えに基づく経済政策を政府は根本的に変えるべきである。コロナウイルス・パンデミックによって引き起こされた危機の前であっても、この案は成功するチャンスは限定的なものであり、国にとって大きな社会的犠牲を伴うものである。COVID-19後には、この計画は国際貿易の減速によってほとんど実現不可能になった。言い換えれば、国際的な雰囲気が2020年初めよりも現在では政府が提案した経済シフトには有利ではなくなっている。

 国際レベルでのこれらの不利な条件を考えれば、そして制裁と封鎖のせいでベネズエラに対する国際市場が一層閉ざされていくことを考えれば、我々には一つの選択肢しか無い。すなわち、国内市場を構築することである。

 ただし、国内市場にやる気を与えるためには二つの重要な政策を変更する必要がある。外国資本を優遇する2019年の外国投資法のような法律を撤廃すること、それと総需要を育成するために賃金を引き上げることである。需要については、現在のベネズエラにあるのは通貨にアクセスできる部門からの限定された需要であり、住民のほとんどは自給自足経済の中で暮らしている。明らかにこれは国内市場の成長には好ましくなく、生産は発展しない。私の見解では、それがベネズエラの現在の危機からの唯一の脱出方法である。

原文URL:

https://venezuelanalysis.com/analysis/14913

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趣旨

今、ラテンアメリカでキューバを先頭とする社会主義、ないし社会主義を志向する大衆闘争が注目です。特に、昨年末(2015年)アルゼンチン、ベネズエラで右翼が勝利し、米国に支援された反動右翼と進歩的な人民大衆との熾烈な階級闘争が繰り広げられています。日本のマスコミは歪められたものしか報道していません。 だからこそ今、目の前で闘われている大衆闘争について現地の報道機関やブログで報道されているものを日本語にして日本の労働者に紹介していくことは、国際連帯としても日本での民主主義を闘いとる闘争にとっても有意義なことであるように思います。

おことわり

このブログでは英文記事を翻訳してご紹介しておりますが、筆者はかなずしも英語に堪能であるわけではありません。 従って、多々誤訳等があるかと思いますが、ご容赦願います。

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