ベネズエラ:危機と批評(4)

  • 2020.03.21 Saturday
  • 05:02

ベネズエラアナリシスに掲載された危機と批評(4)を紹介します。


危機と批評:選挙と軍事介入の間にあるベネズエラ

Crisis & Critique: Venezuela Between Elections and Military Intervention

2020年3月15日 venezuelanalysis(By Ociel Alí López)発

オシエル・ロペスが、米国の攻撃の拡大を背景として議会選挙での競争に向かう野党の歩みを検証する。

VA columnist Ociel Lopez takes stock of the different political scenarios in Venezuela. (Venezuelanalysis)

VAのコラムニスト、オシエル・ロペスはベネズエラにおける様々な政治シナリオを分析している。|写真:(Venezuelanalysis)

 

 3月9日、ベネズエラ議会は指名委員会を招集して国家選挙評議会(CNE)のレクターを指名した。『正義第一党』(PJ)代表代理アンヘル・メディーナが委員会議長に選出され、ベネズエラ統一社会党(PSUV)議員フリオ・チャベスが副議長に指名された。両者は満場一致で選出された。つまり、政府支持ブロックと反対派の両者が委員会の指導部に賛成投票した。国民議会は総意という方法によって選挙に対する可能性を開く上で前代未聞の第一歩を踏み出した。

 前日の3月8日に、ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は米国南方司令部のクレイグ・ファーラー最高司令官と会談し、研究・開発・試験・評価協定(RT&E)に署名した。トランプは強硬右翼のブラジル指導者を3月7日に、コロンビア大統領イバン・デューケを3月2日に迎えていた。主要な議題はベネズエラである。ジャーナリストがベネズエラの海上封鎖の可能性について質問すると、ボルソナロは「状況によっては」可能だと答えた。

 二つのシナリオ(軍事介入と選挙)が、明白な分岐点に不意に現れてきた。

 米国の大統領選挙キャンペーンはまだ8ヶ月残っており、ラテン系有権者へのアピールを強化することになるベネズエラに対する行動を計画している可能性がある。近年ベネズエラに関連してティラーソン、ボルトンおよびペンスが引き継いできたメッセージは今月トランプが開いた会談で簡潔な形で繰り返された。メッセージが以前ほど明確でないとしても、今ではトランプの口から出てきている。「我々が話している事の一つはベネズエラである。我々にとって最大の課題だ。」

 

【選挙】

 新CNE指名委員会議長アンヘル・メディア代理は野党の側の漫然としたシフトの陣頭指揮を執った。彼はチャベス主義だけでなく、体制反対派野党との合意に至るまで何がなされたか説明した。この時点まで、部分的に解決された合意の一部として、憲法の要件に従ってあらゆる事が非常に合理的であるように見える。党首フリオ・ボルヘスがコロンビアに国外追放されているメディアの党PJは代理の声明に否定も疑問の声も上げていないが、一般的には右翼の党は選挙が招集される前にはマドゥーロは辞任しなければならないという自説を持っている。PJと残りのそれほど過激ではない政党は、マドゥーロが大統領でいるかどうかにかかわらず、今年の議会選挙に集中しなければならず、野党の体制転覆という自説を事実上無効にする必要があることを認識している。

 強硬右翼の党『ベンテ・ベネズエラ』の指導者マリア・コリーナ・マチャドはすぐに怒りを爆発させた。マドゥーロ政府がある状態で議会選挙の可能性が開かれているが、彼女の過激な派閥にはそんなことは受け入れられない。

 明らかなことは、超党派の声明を出したメディナ率いる委員会には新CNEを指名するには50日から56日の期間があることである。これは少し前にはほとんど不可能だった前例のない進展であるが、今では対立している派閥の多数の支持を受けているように見える。しかしながら、この総意は過激なアカウントによって支配されているツイッター上には存在していない。その多くはベネズエラ人の海外メディアにコントロールされている。

 これまで、野党は選挙に参加するかどうかで分裂していた。選挙指向の政党は全般的に、過激分子が押しつけた沈黙のスパイラルを前にして萎縮していた。過激分子は選挙を望む「協力者」として彼らを非難していた。しかし、先週は選挙の問題を提起する一部野党の代表が見られた。

 一方、差し迫った議会選挙の展望において、野党を過激派と「穏健」派を分裂させようしていた政府は、この問題に関して一方的な行動で脅かすことを止めた。

 わずか数日前には考えられなかった和解の空気がベネズエラの政治的に対立している両側に定着し始めたように思われる。しかし、些細な挑発であっても対立の炎を再燃させる可能性がある。

 

【戦争】

 トランプと会談する2日前に、ボルソナロはベネズエラからブラジルの外交官を撤退させた。その後、「3月はニコラス・マドゥーロに対する最大キャンペーンの月だ。」と彼は断言した。

 ボルソナロが大統領に就任したときを振り返れば、ブラジル軍の非介入的な性格とベネズエラとの紛争を始めることは好ましくないということについて沢山語られていた。南方指令軍との合意で目新しいものは、数年間続けることが可能となったブラジル軍への直接投資という戦略的方向を開いたことである。

 一方、トランプと会談したデューケは外交の代わりに脅迫することを続け、「制裁に固執することが非常に重要だ。」コロンビアの指導者はコカ作物の空中燻蒸に関する主導権を握っていないことに叱責を受けたが、2019年10月以来非常に活発となっているコロンビアの社会運動からの抵抗を受けることになるだろう行動を実行するために50億US$のクレジットを持ち帰った。

 トランプのデューケとボルソナロの会談に対して、ブラジルの指導者は「ブラジルをベネズエラとの武力紛争へと追いやりたがっており」、両大統領とワシントンの協力はグアイドをホワイトハウスへ招待したのと同じ戦略に従っているとマドゥーロが述べた。マドゥーロによれば、ベネズエラでの何らかの成果を達成するために彼のピースすべてを動かす可能性があり、ブラジルやコロンビアと共に国内での「暴力行為」を煽っている。「我々は民主的で人道的な勢力、ブラジルの人民および軍部にジャイル・ボルソナロの冒険主義を止めさせるように呼びかける。」とベネズエラの大統領が言明した。

 トランプの一般教書演説に現れたグアイドが共和党からも民主党からも同様の支持を受けたことを思いだそう。これは、ベネズエラにおける政権転覆は米国の政治既成勢力における超党派の総意なのである。

 ベネズエラの問題は、もちろん、注目すべきことの一つである。これまでのところ、米国が取った行動は失敗につぐ失敗を重ねている。トランプ政権の高官が絡んだ沢山の行動には、副大統領マイク・ペンス(「人道支援」を強制する試みに失敗)、エリオット・アブラムス(4月30日の軍事クーデター、野党と共謀するはずのマドゥーロ政府の数人の高官が「電話を切った」と彼が述べた。)、そして安全保障担当補佐官ジョン・ボルトン、彼はグアイドを権力につけようとした悲惨なキャンペーンの舵取りの大失敗がある。それゆえ、軍事行動は必ずしも事前に成功が決定されているというものでもなく、トランプにとって政治的大失敗になる可能性もある。

 上記の大統領宣言に対して、ベネズエラの外相ホルヘ・アレアサは「ベネズエラを海上封鎖」しようとする意志を非難し、そのような行為は国連が「戦争行為」と見なしていると述べた。

 緊張の高まりと共に、マドゥーロは3月9日にサプライズ軍事演習を命じた。部隊の移動は朝のうちに始まり、カラカス全体の戦略ポイントに配備された。関連する武器の重要性という点で前例のない兵力の展示となった。

 

【3月10日の結集】

 3月10日のデモは、グアイドがトランプや西側の国家首脳と会談した2020年初頭から始めた世界ツアーの後、彼が最初に呼びかけたデモだった。彼が国際政治の舞台に戻った後、国民議会のCNE指名委員会が設立され、より「穏健な」政党が選挙という解決策に向かう国内議論を進めることができるようになった。トランプはマドゥーロと一緒に議会選挙に参加するという青信号をグアイドに与えることができたのだろうか?

 3月10日のデモ中、選挙の問題はタブーのままだったので、ステージの上で持ち出すことはなかった。しかし、最も重要な野党の一つである『民主行動党』のエンリー・ラモス・アジャップなどの一部指導者は投機に終止符を打つとデモ中に公然と呼びかけた。「憲法に定められた国民議会の選挙を準備しよう。」と。

 デモがカラカスの中心にある国民議会へ向かうことを治安部隊は許可しなかったが、これまでの多くの野党の結集と違って今回は暴力に至らなかった。その代わり、野党の主要な拠点である東カラカスにあるアルフレッド・サデル広場に留まることをデモ隊は選択した。2019年の主要な戦略だった国際圧力による経済危機によってひどく打撃を受けた社会部門の発言に特権を与える、国内対立に関する文書を野党指導部は発表した。

 一方、政府も市の中心部での対抗する集会に支持者を動員し、経済危機が続いているにもかかわらず、マドゥーロが街頭レベルで動員する力を保持していることを証明した。

 この時点では、解決は国内政治であり、外国要因に依存していないように見える。しかし、米国とその同盟国が独自の理論を押しつけ、2018年の大統領選挙のように野党の選挙参加を妨害し、ラモス・アジャップの言葉によれば政府に国民議会を「乗っ取らせる」可能性もある。

 ベネズエラにコロナウイルスが到着すると、この複雑な勢力の相互関係にどのような影響があるのだろうか?

 様々な政治セクタはこの新しい状況を必然的に活用しようとする。それは一定レベルの調停と集団行動を要求し、全般的な政治的動員解除に貢献する。これはまさにマドゥーロが野党をなだめるために必要なものであり、政治的生き残りを膠着状態の永続化に依存しているグアイドにとっては致命的な打撃となるだろう。次回の記事ではCOVID-19パンデミックの政治的意味を検証してみよう。(N)

 

オシエル・アリ・ロペスは、沢山の著作やマルチメディア作品を発表しているベネズエラ研究家である。彼はヨーロッパとラテンアメリカの報道機関のためにベネズエラ社会を分析することに専念している。彼は2006年の代替ベネズエラ国家テレビステーションであるアビラTVの共同設立者である。CLACSO/ASDI研究者賞とブリット・ガルシア文学賞の受賞者。

 

この記事に表明された見解はあくまで著者自身のものであり、必ずしもベネズエラアナリシスの編集スタッフの見解を反映しているものではありません。

原文URL:

https://venezuelanalysis.com/analysis/14812

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趣旨

今、ラテンアメリカでキューバを先頭とする社会主義、ないし社会主義を志向する大衆闘争が注目です。特に、昨年末(2015年)アルゼンチン、ベネズエラで右翼が勝利し、米国に支援された反動右翼と進歩的な人民大衆との熾烈な階級闘争が繰り広げられています。日本のマスコミは歪められたものしか報道していません。 だからこそ今、目の前で闘われている大衆闘争について現地の報道機関やブログで報道されているものを日本語にして日本の労働者に紹介していくことは、国際連帯としても日本での民主主義を闘いとる闘争にとっても有意義なことであるように思います。

おことわり

このブログでは英文記事を翻訳してご紹介しておりますが、筆者はかなずしも英語に堪能であるわけではありません。 従って、多々誤訳等があるかと思いますが、ご容赦願います。

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