ベネズエラ:危機の革命的解決を目指して

  • 2020.03.16 Monday
  • 05:59

ベネズエラアナリシスの対話シリーズです。ルチャ・デ・クラセス(階級闘争)中央委員レアンデル・ペレスとの対話です。ベネズエラの草の根の革命組織、階級闘争組織は資本家と闘いながら、揺れ動く政府に対しても革命的な解決を目指すよう要求している。


ベネズエラにおける労働者階級の闘争:レアンデル・ペレスとの対話

Working-Class Struggle in Venezuela: A Conversation with Leander Perez

2020年2月21日 venezuelanalysis(By Cira Pascual Marquina)発

労働者階級の小さいけれども重要な勝利がベネズエラの危機に対する革命的解決への道を指し示している。

Leander Perez (Venezuelanalysis)

レアンデル・ペレス。|写真:(Venezuelanalysis)

 

 レアンデル・ペレスはルチャ・デ・クラセス(階級闘争)中央委員会の委員であり、国際マルクス主義者派のベネズエラ支部のメンバーである。彼はヒョードル・ドストエフスキーを読みながら、幼い頃に貧しい人々の闘いに加わったが、彼の積極的な政治的関与に火を点けたのは2013年にウーゴ・チャベスが亡くなった時チャベス主義者に対して暴力が行使された時だった。翌年2014年にペレスはルチャ・デ・クラセスに加入した。

 このインタビューで、ボリバル革命の未来における労働者階級の役割を検証しながら、ベネズエラ政府の経済的労働政策を検討する。

 

【去年のベネズエラ政府の労働政策から始めましょう。これらの政策、特に2018年8月に政府が経済復興計画を実行してからの政策をどのように分析していますか?】

 

 最初に私が言及すべきことは経済復興計画が政府の経済シフトの始まりではないということだ。それでも、それは総合的でより精巧な計画であり、合法化した事実上の方法ですでに適用されている政策に統合されている。これには価格統制の撤廃、一部の輸入補助金の廃止、雇用の弾力化、収入の直接・一時的な補助金へ置き換えなどの経済政策がある。

 だけど、経済復興計画に焦点を当ててみよう。最初の項目の一つは貨幣の再転換だった。通貨からゼロが5つ取られ、月額最低賃金が50主権ボリバルから1,800、約30米国ドルへ引き上げられた。チャベスがいたときの最低賃金が約300米国ドルだったことに留意してください。それでも再転換前には給料が月額約2米国ドルであったので、この増額は好意的に受け取られた。

とはいえ、計画には労働者の権利の縮小や容易に労働者を解雇できることなどの政策が含まれていた。

 さらに、先に述べた賃金の引き上げは雇用主への補助金と一緒に実施された。すなわち、政府は3ヶ月分の給料を支払うのだ。後に3ヶ月以上に延長されたこの政策は雇用主が物価を引き上げるのを防ぐことを目的としていた。

 それでは不十分であるかのように、ベネズエラ政府は労働省を通じて、まさに資本家の利益を保護するための指令であるNo.2792覚え書きを発行した。それは労働法148条の非常に雑な解釈を根拠としていた。この条文は、この問題のメカニズムを確立しながら、実際に解雇を制限しようとしている。この覚書は、ある企業が財政危機に直面した時、解雇を評価し、使用者の団体交渉協定違反を承認するために、労働省の代表と使用者が参加する特別な2者委員会が設置されることを定めている。

 

【その覚え履きがどのような影響を労働者に与えたかお話いただけますか?】

 

 ある特殊なケースを話そう。グラフィックアートの統一組合(SUTAGSC)とベネズエラ・グラフィックアート産業協会(AIAG)間の団体交渉のプロセスである。このプロセスで、労働者は小さな集団的な勝利を達成した。しかし、両者が労働監督局(労働省に関連する公的機関)に同意書を提出した時、その機関の代表は契約書に署名させないようにした。なぜなら、「使用者にとって重荷だ」と考えられたからだ。そんなことがあってから、明らかに資本家たちは勇気づけられて、労働者に譲歩を要求してきた。

 同じ頃、計画省がすべての行政の給与を統一する回覧通知を発行したことに言及しておくことも無駄ではない。これが意味するところは、ある日から翌日に法令によって団体協約が無効にされてしまうということである。集団の利益を獲得するための数十年の闘いは捨てられ、給料は下方に統一され、資格や労働者の経験は無視された。

 ベールに包まれた賃金封じ込め政策と収入=補助金(収入を直接補助金と置き換える)プロセスという状況の中で、これらの政策すべてが適用された。今日まで、政府は定期的に給料引き上げ命令を継続しているが、購買力(特に公務員の)は劇的に減少しているというのが実際のところだ。

 具体的に言うと、2018年8月に引き上げられた毎月の収入1,800Bs.Sは30米国ドル相当だったが、2020年1月の毎月の収入45万Bs.Sは約7.5米国ドルの1ヶ月賃金になる。これと共に、暗黙のうちに最低賃金では生活できないと認めているかのように、大統領は祖国カードを通じてボーナス(最低賃金よりも多いことも度々ある)を支給している。

 最低賃金の家計は(ほとんどの公務員と年金生活者)は最も基本的な必需品を満たすにも十分ではない。状況を緩和するために、政府は公務員に食料バッグ(住民向けのCLAPボックスに加えて)を支給している。

 実際、これが公務員が仕事を続けている本当の理由だ。現実は形式よりも優先されなければならないという教訓を適用すれば、今日の公務員に食料が提供される事は理解すべきだ。食料バッグもボーナスも受け取っていないので、年金生活者の状況はずっと悪い。

 

【我々がベネズエラで直面している状況を理解するためには、ベネズエラの生産組織に目をやることが必要です。ウーゴ・チャベス大統領時代の石油ブームの過程で、輸入に有利な政策のせいで地元の生産組織は縮小してしまったことがよく知られています。ただし、生産の劇的な下落は過去5年以内に起きています。公式情報によれば、30%から50%の下落です。この状況に対応するために、政府は税の免除や公共資産を民営化する秘密のプロセスを含む「外国投資」を誘致する計画を策定しました。これらすべてについてどのように考えますか?】

 

 あなたが指摘した生産組織の縮小に関するデータは、ベネズエラ中央銀行が認めているものだが、ベネズエラのブルジョアジーの公的補助金への寄生的な依存性を示している。経済ブームの間、ベネズエラの民間企業は実際には民間の手にある「公共」企業だった。なぜか?彼らは国の石油超過利潤によって直接資金供給されていたからだ。

 今度は、資本家に対する政府のインセンティブと民営化への推進に目をやってみよう。私の見解では、政府は(中国の)小平の改革路線を採択した。これが何を意味するのか?政府は、(一定の法律が適用されない地域)「経済特別区」を開設しながら、低賃金労働、柔軟な労働規制、低税率を提供している。さらに「戦略的提携」(公共企業の秘密の民営化)とブルジョアジーの個人資産の完全な保護が政府の言説の鍵である。実際、チャベスの死後、ベネズエラでは収用が実施されていない。

 さらに、制憲国民議会は、官民企業の株式保有を柔軟化し、戦略部門(石油産業のような)への投資家に税金を免除する外国投資の促進と保護に関する法律を可決した。この法律は2018年のクリスマス休暇中に可決された。

 ニコラス・マドゥーロの2020年の国民向けの演説で、財政問題を取り扱う新しい法律パッケージの承認を求めた。彼は詳細を明かさなかったが、現在の国家の状態を考えると、そのパッケージは民間企業にもっと「インセンティブ」を与える可能性が高い。

 マドゥーロが中国のような性格を持つ資本主義モデルに向かってベネズエラの舵取りができる「男」であることを証明しようとしていることに疑いはない。ただし、調整パッケージと外国人投資家へのインセンティブが期待した結果を生んでいないことに注意しておくことは重要だ。この理由は沢山ある。第1に、世界資本主義が危機にあり、多くのビジネスが世界中で閉鎖されていることだ。第2に、ここに投資可能なわずかの資本家はボリバル革命とその大衆的な示威運動を恐れている。最後に、おそらくこれが最も重要な問題だが、ベネズエラにおける資本家の唯一の長期的目標はこの国家の石油の超過利潤を獲得することであったし、今でもそうである。言い換えれば、国際資本には石油産業と進行中の鉱山戦略に集中する以上の関心はない。

Nurses mobilize for a living wage. Caracas, October 2019. (Archives)

生活できる賃金を求めて結集する看護師たち。2019年10月、カラカスで。|写真:(Archives)

 

【最近、教師、看護師、地下鉄労働者などの労働者階級の結集と幅広い人々の抗議行動がありました。月間の最低賃金が5米ドルから10米ドル間を揺れ動き、労働者階級の集団的権利が大幅に後退していることを考えると、この街頭での結集が比較的小さな規模だったことには驚きでした。どうしたのでしょうか?】

 

 あなたの言うことは本当だ。結集した人数は労働者階級に課せられた(緊縮)パッケージには割の合わないものだ。進行中のハイチ、エクアドル、チリやコロンビアの反乱を考えれば、一層驚きだ。

 60年代以降、石油超過利潤によって、「エリートを和解させる大衆向け制度」、「実利的なメカニズムが体制の支持者を生み出す上で中心的な役割を果たす、異質な利益の適用および交渉の複合的な制度」とファン・カルロス・レイが名付けたものを構築することができた。あるいは、グラムシの言葉を借りれば、石油超過利潤の収入によって形成された譲歩を通じて国家は支配権を構築した。

 一つの例を挙げると、石油の超過利潤によって、重要な労働組合運動であるベネズエラ総同盟(CTV)は階級的独立を放棄しながら、労働者代表のための企業メカニズムを確立することができた。チャベス政府の間は、このモデルは批判され、独立した、階級に根差した労働組合運動を推進しようとする試みがあった。その中から、ボリバリアナ社会主義労働者センター(CBST)が出て来た。CBSTは誠実な討論から生まれたが、最終的には政府の付属物に退化した。

 今日の労働者組織を制限している要因として、労働運動の中の階級的指導性が不足していると指摘することもできる。階級的独立を持つ組織を設立するという最近の試みは、右翼を支持することになった日和見的な組合のせいで分裂してしまった。これはベネズエラ産業横断労働組合(ITV)の事例である。それはすぐに指示対象となったが、ファン・グアイドのクーデター未遂を支持するためにそれを利用した連中によって清算された。

 さらに、ベネズエラ共産党が推進する労働者階級闘争のための全国戦線(FNLCT)のような取り組みがある。その戦略は労働省当局との交渉を進めることである。まだ、これらの交渉ではほとんど、あるいはまったく解決に至っていない。

 しかし、労働者階級が経済危機の結果に直面してから、度々発生したことは労働者たちが問題の集団的な解決策を見出すことができず、不安定な状態や移民でのもっといい稼ぎといった個人的な解決策を求めたことである。

 これだけでは不十分であるかのように、政府は非常に巧妙で、敵となる可能性を中和するためにニンジンとムチを組み合わせた戦略をとっていることを我々は認識しておかなければならない。政府はボーナスや食料バッグのようなお客様政策を通して圧力を緩和しようとしているが、あらゆる障害を乗り越えてきた人々の反抗的な表現を公然と抑圧している。抑圧の一つのケースは汚職と企業の民営化を非難したラクテオス・ロス・アンデスの労働者であり、もっと最近では教師の抗議である。どちらも本物のチャベス主義者の組織とは関係のない暴行グループから嫌がらせを受けた。そのメッセージは明確である。「おまえたちは従うのか、さもなければ出て行け」こうした状況で、抗議に対する公然および秘密の両方の抑圧がその日の命令である。

 

【元の状態に戻るためには、多重危機と帝国主義者の包囲攻撃という状況において、重要なことは労働者階級の闘いが明らかに消極的であることではないのですか?】

 

 政府の政策は非常に危険だと思っている。それは大衆の支持を弱めている。実際には、(政府の)防衛のために現在の基盤はブルジョア機関と文民あるいは軍の官僚組織、特に後者である。それは政府から多大な譲歩を受けている。

チャベスは頑固だった。すなわち、社会主義プロジェクトは労働者・コミュニティ組織・農民及び一般的に搾取されている人民の支持を基盤としなければならない。対照的に、この政府は犠牲を要求することによってブルジョアジーの観点から労働者の役割を理解している。すなわち、労働者階級は資本家に知られている唯一のもの、すなわち利益を確保するためにどんな犠牲を払ってでも生産を拡大しなければならないと。

 労働者階級の闘いは解決策を提供し、社会主義プロジェクトを回復させることができる唯一の道であり、社会主義は多数者の生活を本当に改善できる唯一の解決策である。

 資本主義の危機を脱出しようとする政府の政策は労働者階級を弱めるだけである。このことを念頭に置いて、すべての左翼組織がブルジョアジーと政府の布陣からくる共同した攻撃への対抗措置として現れてくる闘いを支援することが非常に重要である。労働者階級の闘いが今防衛的な性格を持っているものがあることは本当だ。高い生活費に対して結集するものもいれば、賃上げを要求する人、集団的権利を防衛する人もいるが、エクアドル、チリあるいはコロンビアで起きているように、防衛的な闘いは革命的な形態へと飛躍する可能性がある(しなければならない)!

 闘いは永く続く。このため、それぞれの敗北から沢山の教訓を引き出さなければならず、またそれぞれの闘いの勝利は階級全体に刺激を与えるために投影されなければならない。

 一例として、グラフィカス・ウルトラ労働者の闘いを取り上げよう。従業員たちは使用者側と団体協約を交渉するために座り込んだ。使用者側は自分に有利な政府の規定を利用してわずかな譲歩も拒否し、「解決策」としてレイオフを提案した。使用者側は多くの労働者が「ハッピー小箱」(退職パッケージ)を受け取ったという彼らに有利な事実を取り上げ、労働者の結集能力に影響を与えた。組合の解雇受け入れ拒否に直面して、資本家たちは交渉を終わらせ、組合代表が会社内敷地に入ることを阻止した。

 残った労働者たちは、団結と階級意識の印象的な表示を示して組合代表を防衛し、働くことを拒否した。これはさらに多くの労働者の結集を招き、スムルフィット・ケイパ(現在労働者管理下にある工場)の例に従って、労働者管理下に会社を占拠することを要求し始めた。最終的に、労働者の乗っ取りの危機に直面して、使用者側は屈服し、交渉再開に同意した。

 これは小さな勝利だとみられるかもしれないが、力の非対称性、モラルの向上、闘いから生まれた意識の向上、他の闘っている労働者に実例を与えたことを考えれば、勝利は巨大だ!その階級の肩から危機の負担が取り除かれるように、この労働者たちは革命的な方法で前進する道を示した。(N)

Teachers mobilize for a living wage. Caracas, November 2019. (Archives)

生活できる賃金を求めて結集する教師たち。2019年11月、カラカスで。|写真:(Archives)

原文URL:

https://venezuelanalysis.com/analysis/14792

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趣旨

今、ラテンアメリカでキューバを先頭とする社会主義、ないし社会主義を志向する大衆闘争が注目です。特に、昨年末(2015年)アルゼンチン、ベネズエラで右翼が勝利し、米国に支援された反動右翼と進歩的な人民大衆との熾烈な階級闘争が繰り広げられています。日本のマスコミは歪められたものしか報道していません。 だからこそ今、目の前で闘われている大衆闘争について現地の報道機関やブログで報道されているものを日本語にして日本の労働者に紹介していくことは、国際連帯としても日本での民主主義を闘いとる闘争にとっても有意義なことであるように思います。

おことわり

このブログでは英文記事を翻訳してご紹介しておりますが、筆者はかなずしも英語に堪能であるわけではありません。 従って、多々誤訳等があるかと思いますが、ご容赦願います。

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