ベネズエラ:米国による経済「テロ」下の抵抗から生み出される新しい社会

  • 2020.02.06 Thursday
  • 05:37

米国には他国を「制裁」する権限もなければ、地位にもない。だからイランが言うようにそれは経済「テロ」という方が正しいと思う。ベネズエラの人民はこのような厳しい環境にあっても、落胆や絶望ではなく草の根組織を活性化させ、新しい種類の社会を生み出そうとしているというPeter Lackowski氏のリポートです。


ベネズエラ、2020年1月:苦難と抵抗

Venezuela, Jan. 2020: Hardship and Resistance

2020年2月1日 teleSUR(By: Peter Lackowski)発

People take part in the March in Solidarity with Venezuela in Havana, Cuba, on Aug. 25, 2017.

ハバナでのベネズエラ連帯デモに参加した人々。2017年8月25日、キューバで。|写真:Reuters写真:Xinhua

 

経済戦争は普通のベネズエラ人の生活をより困難にする上で確かに効果的である。しかし、我々は落胆や絶望ではなく、草の根組織の活性化を観察した。

 今年1月、私は北アメリカのグループと一緒に経済「制裁」が人々の食料入手にどのような影響を与えているかを自分の目で確認するためにベネズエラへ行った。我々は、彼らの経済的な健全性に対する大規模な攻撃にベネズエラの大衆階級がどのように対応しているか知りたいと思っていた。

 表面上はそれほど明らかでない場合もあるが、実質的にあらゆる種類の生産活動が多くの方法で不自由とされている複雑な現場を我々は目撃した。それにもかかわらず、人々にはその状況に時間をかけて適応しており、彼らは創造的でエネルギッシュで断固としていた。コミューンが成長し、政府も生き延びて、そして「2017年ほど悪くない」が市民の口癖だった。自国の食料主権を達成する取り組みをしている人々にあった時に聞いたいろんなストーリーがある。

 

 人民の大多数に適切な食料を獲得する上で最大の問題は世界中と同じだ。すなわち、食料生産と分配のそのほとんどが依然として資本主義制度を通じて行われていることである。ベネズエラは社会主義をその目標としている社会主義者党によって統治されている。しかし、資本主義セクタは経済のおおよそ80%を支配している。政府のシェアはほぼ石油と幾つかの重工業にある。店舗やレストランには食料が豊富にあるが、価格が高すぎてほとんどの人々は簡単に入手できない。昨年まで、業者が設定できる価格を政府が統制する制度があり、できるだけ小売価格を低く抑えるために輸入業者に割引してドルを売っていた。輸入業者などの大規模な汚職がこの制度の継続を不可能とし、政府には売るドルが無くなったので、経済戦争が価格を吊り上げるとそれは崩壊した

 政府の対応は代替の制度を設定して、品薄を根拠として食品を手が届かなくすることで利益を上げている仲介業者の一部を少なくとも排除することだった。

 食料は政府によって大量に確保され、コメ、レンティル豆、豆、ツナ、調理油、パスタ、トーモロコシ粉、砂糖やミルクなどの基本的な食品がパッケージされた。近隣約200家族(農村ではもっと少ない)で構成されたコミューン住民評議会が設定した委員会を通じてこれらは配布されている。受取人は約50セントという名目上の価格を支払う。このシステムはCLAP(地域供給・生産委員会)と呼ばれている。

 我々はパッケージが定期的に届かない所、全く届かない所、それから時々特定の品目が欠落しているところに遭遇した。我々は西部のメリダとスリア州が深刻な飢えに苦しんでいる地域だと聞かされた。それでも、CLAPは多くの命を救い、約600万世帯がそれに依存しており、人口の60%にあたる。

 ボリバル志願市民軍が食料配布を分担しているが、政府は依然として生産物を入手するために商業経路に頼らざるを得ない。米国の経済戦争戦略はベネズエラが資本主義世界とビジネスすることをほぼ不可能としている。ポラーのようなベネズエラの大企業は食品ビジネスの多くを支配している。深刻な障害があるが、このプログラムは続いている。

 

 学校、工場、大学や研究所には食事を供給する施設がある。多くのコミューンが人々に食事を供給するシステムを運営している。我々のグループはカラカスの急こう配の中腹にあるアルトス・デ・リディセを訪れた。貧困と栄養不良が拡大している地域では「食事の家」が設置されている。最大200人の人々に調理された食事を提供できる施設を運営する意志を持つ家屋の所有者が見つかった。政府は適切な機器でキッチンを改善する資金を提供している。食料品の一部は政府によって、一部はコミューンによって提供されており、調理チームはその仕事に対して賃金が支払われている。

 厳格な会計を含めてコミューンがこれらのキッチンの運営に責任を持っている。すなわち汚職を無くすために、帳簿がコミュニティに公開されている。この透明性はすべてのコミューン企業にとって基本的なことである。アルトス・デ・リディセでは、我々は薬局、縫製ビジネスやその他の生産プロジェクトを見た。コミュニティのメンバーは業務を行うだけでなく、帳簿の管理にも参加している。

 食品の流通チェーンにおいて資本主義仲介業者が絞り出す利益を取り除くことは解決策の大きな部分である。ファーマーズ・マーケット、農村と都市のコミュニティの直接的なつながり、農民が必要とする資金を提供するための消費者たちの前渡金制度がある(米国におけるCSAと似たようなもの、コミュニティが農業を支える)。しかし、ほとんどの農業の生産地域は都市の中心から遠い。

 トラックや自動車のスペアパーツは入手不可能な場合が多く、多くが故障している。アルトス・デ・リディセはゴミ圧縮トラックの不足に対処しなければならなかった多くのコミュニティの一つである。原油をガソリンに精製するために必須の化学物質はもはや米国から入手することは不可能である。それは燃料不足につながっている。こういうことによって、食料供給においては輸送が深刻な問題となっている。生産物を消費者に直接販売したい多くの農民には選択肢がない。すなわち、彼らは生産物を業者に売るしかない。

 チャベスが大統領になってすぐ、ベネズエラ海域で工船による大規模なトロール漁が禁止された。海底の生態はもはや破壊されることはなく、魚はより豊富になった。彼らは今無甲板船で捕獲している。しかし、封鎖のせいで船外機の交換部品も入手することができない。同国の中央部を訪れたチョローニとチャオの船は、様々な深さにいる魚の群れを見つけることを可能にした技術を使い始めたので、なんとか漁獲量を増やすことができている。他の海岸地域の人々はまだその装置を持っていない。魚を消費者に届けるためにもトラックが必要である。そのトラックには冷蔵庫が必要であり、それも修理が必要となるかもしれない。電化製品の多くは我々が修理できないように作られている。ベネズエラの人々は修理することもできないが、新しいものを購入することもできない。

 

 種子がもう一つのボトルネックである。ベネズエラの農民が頼りにしてきた輸入種子はもはや入手できない。例えば、我々はジャラクイにある農場を訪問したが、そこでは種子が不足しているため土地すべてを利用できていなかった。カラカスにある都市の『アルトス・デ・リディセ』コミューンの人々でさえ、私が荷物の中に入れて持ち込んだ種子を非常に欲しがった。彼らは急峻な坂に段々畑を作っており、トーモロコシなどを栽培してきた。彼らはビートやニンジンなどの種子を手に入れたので、いくつかの植物を種子化し、種子バンクを作ることができる。

 食料生産に関するベネズエラ政府の見解をもっと学ぶために、科学技術省のディアナ・カスティージョ長官とベネズエラにおける農業環境保護的・有機的・非GMO農法を確立するために奮闘してきたリーダーである科学者活動家のミゲル・アンヘル・ヌニェスにインタビューした。

 彼らは過去の農業政策から根本的に脱却している概要を説明してくれた。ヌニェスは科学者・農民同盟について話し、自分の土地に生きる農民の生き方、実践の中で示されている植物や土壌の生態に関する知識に敬意を払っていた。農民家族が住んでいる庭、ベネズエラでは「コヌコ」、メキシコでは「ミルパ」は持続可能な生産形態であり、新しい種類の農業生産モデルである。土壌の育成、害虫駆除、生産を改善する生態学的な手法を使用するための包括的なプログラムにおいて鍵となる要素として同省は種子に焦点を当てている。

 このアプローチの注目すべき成果の一つは地元の条件に適応したジャガイモの開発である。保証されたジャガイモの種を供給するセンターがアンデスのメリダ州に24か所、全国の他の州に24か所設立されている。

 科学技術はあらゆる意味でセキュリティに対処するために他の省と協力しなければならない。彼らの懸念の一つが汚染である。すなわち、GMO植物からの遺伝子が種子バンクに入り込むこと、植物や動物の病気と共に汚染された輸入品、土壌を損傷する生物による汚染である。ベネズエラの遺産の多様性と生物多様性は保護されるべき資産である。政治的な脅威も存在する。グアイド派の人々は遺伝子組み換え種子を持ち込むために法律草案をすでに策定済である。土地改革が覆され、米国が再建しようとしている新自由主義政府によってモノカルチャーが奨励されようとしている。

 

 土地改革はチャベスの選挙と共に本格的に開始されたが、苦々しい、永く続いた闘いだった。15から20家族が集団で運営しているジャラクイの農場を訪ねた。その10ヘクタールは、食料を生産していない大きな区画の一部であり、そのため、土地改革法に従って再分配の対象だった。その土地を耕作する法的な権利が認められるまで数年を要したが、その間には暴力や暗殺未遂の攻撃を何度も受けた。もし政府が変われば、元地主が彼らを追い出そうとすると彼らは予測している。

 農民たちは彼らの戦術は常に非暴力的だと話していた。すなわち、どれだけの食料を作り出せるかを示すことによって支持を獲得してきたのだ。しかし、彼らは自分たちが作ったものを防衛することを決意している。ボリビアでのクーデターの後、ベネズエラ政府が志願市民兵の部隊に武器を配布したことを彼らは指摘した。農民たちは仲間の農民たちが土地改革によってもたらされた変化は不可逆だと考えていると話している。彼らには達成したものを守るために丘を確保する準備ができている。

 ベネズエラ人の51%が、自分がアフリカ系の子孫であると認識しており、彼らの多くがジャラクイの砂糖精製所を中心とした町ベロエスのような地域に集中していることが最近の国勢調査で判明した。ベロエスの市長たちはボリバル・プロセスから恩恵を受けたすべての根拠から話しはじめ、それまでに払ってきた莫大な「社会的負債」に要約した。現在の状況について、「我々は何世紀もの間、シマロネス(逃亡奴隷)だった。」と、奴隷制から逃げ出し、自分たちの自由を果敢に防衛した人民の自治コミュニティとしてのベロエスの歴史を話した。サトウキビ栽培に必要な農機の部品や肥料が不足しているため精製所は生産能力以下の操業となっている。種子は手に入れることはできたが、精製に必要な特定の酸が不足していた。彼らは多様化することによって前に進んでいる。我々は様々な生育段階にある水田を見せてもらった。

 精製所は町と不可分な関係にある「社会的資産」である。我々が到着すると、オフィスビルに面したフィールドでトレーニングしている若者たちを見た。この地域では砂糖・たばこ・コーヒーと野球選手を生産していると教えてくれた。現在、この町のプログラムで育った7人のメジャーリーグ選手がいる。大リーグ選手たちはオフシーズンには子供たちにコーチをするために戻ってくる。今は「制裁」のためにそれができなくなっている。

 多くの農民は輸入肥料を使わずに洗練された有機農法に取り組み始めた。別の農場では昨春大規模な停電を引き起こしたサイバーテロの際の電力サージについて話してくれた。微生物を培養している実験室に不可欠な冷凍庫と空調をサージは破壊した。全国の電子機器が影響を受けたが、それはベネズエラの食料生産能力に対する隠れされた、あまり明らかにされていないもう一つ戦争の結果である。

 

 米国は汚職や麻薬取引などに関与していると言って、沢山のベネズエラ高官の資産を凍結した。一見、この戦術は関係する個人にだけ影響を与えるように見える。しかし実際には、それはこの国のすべての人の生活を攻撃するもう一つの手段である。もし米国がある官僚を「汚職」と指定すれば、たとえ告発が正しくなくても、彼らが関与するあらゆる取引が自動的に疑わしいものになる。その高官の会社あるいは省庁と取引する会社は、米国が「犯罪」と指定した取引に対して告発あるいは処罰のリスクを負うことになる。この脅迫は帝国主義の支配に抵抗するベネズエラを経済的に孤立させるもう一つのやり方である。それは指名された個人に害を与え、その効果は高官に仕事を依存している大衆の階級にとって日々の無数の問題の中に感じられている。

 エル・アティージョは大カラカスを構成する5つの自治体の一つである。その小さいけれども魅力的なボリバル広場は観光客や裕福なベネズエラ人に饗応する店舗やレストランに囲まれている。その自治体にはまた急峻な丘や深い谷の農村地域があり、比較的都市に近いという有利さを生かした小規模生産者がいる。我々は教授や学生、それとこの国で最も高名な大学の一つであるシモン・ボリバル大学を最近したばかりの卒業生と一緒に幾つかの家族を訪問した。インフレが彼らの給与価値を減らし、他の収入源を必要としていた。

 そこにはチャベス主義者がおり、彼らは皆ファーマーズ・マーケットに持ち込む農産物の生産に従事していた。ベリーを発酵させるワインメーカー、栄養価の高い根っこから香りのよいクラッカーやパンの原料ともなるキャッサバの栽培者、薬剤としての使用に助言を与えているハーブの生産者である。彼らはしっかりとボリバル革命と共に働いている専門家であり、人民から人民へ経済に向けて生産している。

見方次第では、チャベス主義者は多くのことでニコラス・マドゥーロ大統領を批判することが度々ある。多くの人は議員特権があろうとグアイドを逮捕すべきだと考えている。ブルジョアジーに対してあまりにも妥協的だと見ている人もいる。農村のコミューンは大土地所有者との闘いでもっと保護と支援を望んでいる。しかし、エル・アティージョのこれらの人々は、マドゥーロの全体的な業績に対して意外に高く評価している。

 彼らはこの国の管理しているボリバル政府を維持できており、それによって野党が新植民地としてベネズエラの20世紀の状態に復活させることを阻止していることを主に讃えている。大衆階級の福祉に対するチャベスの懸念を継続するものとして、(今日まで300万戸以上の住宅を建設した)住宅ミッションやCLAPのようなプログラムを彼らは見ている。国民通過ボリバルへの攻撃に対する革新的な対応としての仮想通貨ペトロの導入、単に現実的なものとしてドル化をマドゥーロが容認したことを彼らは高く評価している。

 マドゥーロに対する彼らの積極的な擁護は、彼らが日常的に対処しなければならないエリートUSBの悪意に満ちた反チャベス主義のせいではないかと私は思う。最近の卒業生は、学生や教授から嫌がらせを受けたり、悪口を言われたりし、同じように、政治的な理由で成績を下げられ、

奨学金学生事務所を襲撃し彼らのファイルに糞や小便をかけられたと話した。

 国民議会が議長であったグアイドを交代させた時、我々は町にいた。いつものように、カラカスで聞いたその出来事の説明は米国のマスコミの説明とは全く違っていた。しかし、我々が尋ねない限り、右翼政治家の活動は会話には出てこなかった。政府に不満を持っている人々でさえ、大衆階級の間で右翼政治家がそれなりの信頼を得ているという兆候を見つけることはなかった。

 

 経済戦争はごく普通のベネズエラ国民の生活をより困難にする上では確かに効果がある。しかし、落胆や絶望ではなく、我々は草の根組織の急激な高まりを見た。すなわち、コミューン、ファーマーズ・マーケット、集団農場、市-国間の直接交換、多くの形で建設されるコミュニティ。今年1月に我々が会った活動家たちは、チャベスが開始したボリバル・プロセスはこの経済戦争を生き延びるという感覚、控えめな楽観主義を共有している。一方で、協力、社会的連帯、および相互支援という共通の価値感を基盤とする新しい種類の社会が現れつつある。(N)

Venezuela's own version of bitcoin will challenge all U.S. imposed sanctions.

teleSUR Englishさんの投稿 2017年12月4日月曜日

原文URL:

https://www.telesurenglish.net/opinion/Venezuela-January-2020-Hardship-and-Resistance-20200201-0008.html

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趣旨

今、ラテンアメリカでキューバを先頭とする社会主義、ないし社会主義を志向する大衆闘争が注目です。特に、昨年末(2015年)アルゼンチン、ベネズエラで右翼が勝利し、米国に支援された反動右翼と進歩的な人民大衆との熾烈な階級闘争が繰り広げられています。日本のマスコミは歪められたものしか報道していません。 だからこそ今、目の前で闘われている大衆闘争について現地の報道機関やブログで報道されているものを日本語にして日本の労働者に紹介していくことは、国際連帯としても日本での民主主義を闘いとる闘争にとっても有意義なことであるように思います。

おことわり

このブログでは英文記事を翻訳してご紹介しておりますが、筆者はかなずしも英語に堪能であるわけではありません。 従って、多々誤訳等があるかと思いますが、ご容赦願います。

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