ボリビア:クーデター後、選挙情勢について

  • 2020.01.14 Tuesday
  • 05:46

NACLAに掲載されていたボリビア情勢に関する記事を紹介します。


ボリビアが(エボ抜きで)新しい選挙に向かうが、MAS党は脅迫されている

MAS Party Under Threat as Bolivia Moves Towards New Elections (Without Evo)

2020年1月10日 NACLA(Emily Achtenberg)発

ボリビアで新しい選挙が予定されているが、攻撃されているMAS党、事実上の暫定政府によって元気づけられた復活した右翼という状況の中で、左翼の先住民の団結がこれまで以上に必要となっている、

A person waves the Wiphala during a gathering of social movements in Cochabamba, Bolivia, July 2013. (Photo by Ricardo Patiño/Wikimedia)

コチャバンバでの社会運動での集会でWiphalaを振る男。2013年7月、ボリビアで。|写真:Ricardo Patiño/Wikimedia

 

 ボリビアは、エボ・モラレスが候補者とはならない18年振りの大統領選挙に向けて、5月3日の投票に再び向かっている。

 大統領、副大統領および他民族議会議員の「やり直し」投票が、ボリビアの暫定大統領によって招集された。彼女は11月10日に、市民・軍部クーデターによってモラレスが辞任を強制された後、権力を引き継いだ。11月24日に採択された法律は、モラレスを追放に導いた紛争中の10月20日の選挙結果を無効としたが、社会主義指向運動(MAS)党が新しい選挙に参加する場所を保証した。しかし、モラレスも含めて連続2期以上の立候補を禁止する現存の憲法規定も承認した。

 争点となった10月20日の投票後、数週間にわたって同国を激震させた激しい暴力を鎮めようとして、MASが支配する議会で妥協した選挙法が満場一致で可決された。選挙後の対立で少なくとも35人が死亡し、700人がけがを負ったが、ほとんどすべてはクーデターの後だった。

 選挙法と併せて、カソリック教会、ヨーロッパ連合と国連によって仲介された交渉によって、市民対立の地帯から部隊を撤退させ、社会的抗議行動を弾圧するために軍隊を免責する問題のある命令を撤回することをアニェス政府は余儀なくされた。引き換えに、反クーデターの抗議行動も数週間にわたって都市への食料とガスの配給を麻痺させていた大規模な路上障害物を撤去した。その結果、目前に迫った選挙の約束を布告する有効な休戦が可能となった。

 アニェス支持者たちは、ボリビアでの政治の正常化と民主主義の復活に向かう重要な一歩として選挙の要請を誇示している。実際には、殺害と暴力的な衝突は収まったものの、この国には極度の2極化と政治的な不安定さが残ったままであり、表面下では一色触発の爆発しそうな緊張がある。少なからず、「世話人」の負託外で広く統治し、不和を煽り、平和的な政治的和解に向けた展望を蝕んでいる事実上の体制の報復的な行動と対立した主張がこの原因である。

 

【事実上の政府】

 広く報道されているように、低地ベニ地方出身の無名の右翼上院議員であるヘニーネ・アニェスは、モラレスの脱出に続いて数人のMAS指導部の辞任によって生じた権力の空白が彼女に継承させ、大統領職を引き継いだ。10月の選挙では彼女の政党はわずか4%しか獲得しておらず、彼女自身も再選を求めていなかった。いくつかの説明によれば、モラレスの安全な国外脱出の約束と引き換えに、MAS指導部は切羽詰まって彼女の継承に同意した。

 アニェスは軍と憲法裁判所の支持を得て大統領に就いた。憲法裁判所は以前に4期目の大統領に立候補するモラレスの「権利」を支持した機関である。しかし、彼女は大統領を継承するために憲法が要求している議員の定足数を獲得することに失敗した。対立している言説によれば、MASの議員は議会をボイコットしたか、恐怖から欠席していた。

 新しい選挙を準備することだけの役割である「暫定」大統領としての彼女の限られた任務にもかかわらず、アニェスは数日間でモラレスの内閣を一掃し、ボリビアの右翼と深いつながりを持つ新指導部を設置した。過去8週間の間に、誰一人選ばれた訳ではないアニェス体制は、MAS党の政策をひっくり返し、MASの指導部を迫害し、支持者を恫喝することによって、MAS党を弱体化させる攻撃的で報復的なキャンペーンを開始した。偶然ではなく、これらの戦術は来る選挙に先だってこの体制の保守基盤を活性化することに役立った。

 手始めに、アニェスはサカバとセンカタでの先住民の反クーデター抗議行動を弾圧するために軍隊を配備し、19人の死者と数百人の負傷者を出した。最近の報告書では米州人権委員会(IACHR)は、これらの事件を政府の違法な免責命令の下で軍による大規模な人権侵害を伴う虐殺と見なした。今日まで、暫定政府はこれらの殺害の責任を認めることを拒否している。IACHRは独立した調査を要請している。

 この政権は、クーデターの後MAS支部の抗議行動参加者によって実行されたいわゆる「都市包囲攻撃」の扇動とテロリズムを非難して、モラレスに対するインターポール逮捕状を発行した。現在アルゼンチンに政治亡命しているモラレスは、アルベルト・フェルナンデス大統領の支援を得て、有名なスペインの法学者バルタサル・ガルソンなどの強力な国際弁護団を編成した。

 一方、ラパスのメキシコ大使館に留まっている9人の元MASの高官たちは、アニェス政府によってメキシコへの安全な渡航を拒否されている。最近アニェスは、亡命希望者の脱出を企てたとして3人のスペインとメキシコの上級外交官を追放して国際的な騒動を引き起こした。

 現在までに100人以上のMAS政府官僚が拘束され、テロから選挙不正、国家資源の乱用に至る刑事告発に直面している。アニェスは元執行機関の約600人の当局者とその家族が捜査対象となっていると発表している。

 チャパレは歴史的にMAS支持者の拠点であり、高度に組織されたコカ栽培地域だが、今は反クーデター抵抗運動の中心地であり、住民は政府の激しい報復攻撃に直面している。クーデターにつながった重要な出来事である、11月7-8日の警察の反乱の後、抗議行動はアルツロ・ムリージョ(現内務大臣)所有の地元の観光ホテルを燃やし、9カ所の警察署に火を点け、警察が逃亡したことによってコカ・ユニオン連合防衛隊が治安活動を譲り受けていた。

 ムリージョは、もし警察が再び入ることができなければ、来る選挙でこの地域全体の選挙権を奪うと脅迫した。今大統領官邸から出される強硬な反薬物の主張を考えれば、コカの栽培者たちはモラレスによって始められたコミュニティが管理する成功したコカ生産システムと彼らの生計手段を傷つけられる可能性があると予想している。

 国内報道機関の検閲と放送局の停電が事実上の政府の下で蔓延している。テレスールやロシア・ツデイなどの外国放送局は全国のケーブルシステムから排除され、53のコミュニティラジオ局も閉鎖された。新通信大臣は自由な言論を取り締まるという彼女の初期の約束は取り消したが、大晦日に3人のジャーナリストが逮捕され、ソーシャル・メディアで政府を批判したことによりテロと扇動で告訴された。

 政府はMAS政府の外交政策を全面的に見直し、ベネズエラにおいてはマドゥーロ大統領から反乱野党の指導者ファン・グアイドとの同盟にシフトし、米国やイスラエルとの外交的結びつきを復活させ、モラレスの公共医療制度の支柱となっていた700人のキューバ人医師を追放した。また、左派系のALBAやUNASURからボリビアを脱退させ、米国支援のリマ・グループに加わった。一方、トランプ政権は、モラレスが麻薬対策の取り組みに協力しなかった時に科した、ボリビアに対する永年の対外援助禁止を撤廃した。

 アニェスの開発大臣は公的企業の民営化と国家の縮小を支援することを宣言し、過去の緊縮政策への復帰や、リチウムなどの天然資源を含めて、多国籍企業による経済の管理という忌まわしい亡霊を呼び起こした。さらに、先住民の祭りを「悪魔的」と非難し、すでに削除された過去のツイートからMASの指導者たちを「野蛮人」と表現した最近のコメントまで、暫定大統領の対立を煽る人種差別的な言説は、モラレスの非植民地化政策の下で達成された重要な成果が解体の危機にあることを先住ボリビア人に示唆している。

 

【選挙情勢】

 暫定政府によって設定された選挙スケジュールは当初より延ばされ、アニェスが損害を与える時間が長くなったが、党の登録締め切り(1月24日)と候補者選定(2月3日)の締め切りは比較的短い。

 これらすべての困難な課題に直面して、MAS党は自身を再編成し、新しい大統領候補者を決定するのに苦労している。予想通り、党のカリスマ的な団結と統制力としてのモラレスがいないので、過去には公然と現れることがなかった反対意見と共に、競合する派閥が現れてきた。

 今でも、モラレスはアルゼンチンから党の公式な選挙運動のマネージャとして目立っており、ソーシャル・メディアで盛んにコメントしている。1月19日にアルゼンチンで開かれる党の指導者会議で候補者が正式に選ばれ、その後、モラレスの憲法上の役割が正式に終了する1月22日にボリビアで大規模な集会が行われると彼が発表した。

 検討中の候補者の中には、11年間モラレスの外相を務めたアイマラ族の指導者ダビド・チョケウアンカが党のラパス支部とサンタクララ支部の支援を受けている。チャパレのコカ栽培者組合連合のダイナミックな若い指導者アンドロニコ・ロドリゲスは彼の地域の強い支持を持っており、副大統領候補として考えられている。

 その他の候補者には、モラレスの成功した経済施策の立案者として広く信任を得ている元経済大臣ルイス・アルセ、モラレスの最近の外相でケチュアの活動家ディエゴ・パリ、元MASの上院議長で強硬派の党の闘士アドリアナ・サルバティエラがいる。これらの候補者すべては多かれ少なかれモラレスに忠実であると考えられている。

 クーデター以来、より穏健な反対派は、特に上院議長エバ・コパアニェスが政府との交渉を主導した議会内でますます注目を集めるようになっている。32歳の先住民の都市エル・アルトを代表するコパは、アルゼンチンにいるエボ・モラレスに最も近いMAS強硬派に対して、党を傷つけた「特権グループ」と公然と批判している。彼女は、元MASの元大臣である父親を迫害から守ろうとして、クーデターの後上院指導部を辞職し、野党に議長を引き渡したアドリアナ・サルバティエラを非難している。

 コパは、現在の危機を乗り越えるために必要な戦略として、体制と共謀したと非難された彼女の議会的実用主義を擁護した。「我々には逃げるお金はない。だから結果と向き合わなければならない。」と彼女は話している。コパは現在大統領選挙への関心を全く否定しているが、彼女はMASの候補者がアルゼンチンから決められるのではなく、ボリビアで党を基盤とした大衆的な総意を反映するものであると保証することを党の指導部に突きつけている。

 野党勢力もまた分裂しているが、より大きな団結に向かって歩を進めるかもしれない。10月の選挙に立候補した3人の候補は再び立候補する意志を宣言している。モラレスの主要なライバルで、36.5%の票を獲得した中道右派の元大統領カルロス・メサ、8.8%の票を獲得した福音派の保守チー・ヒュン・チュン、1.25%の票を獲得したラパスのアイマラ族の知事フェリックス・パツイである。

 さらに、モラレスを打倒したクーデターの大衆的な顔として全国的な名声を博したサンタクルスのカリスマ的な市民リーダー、ルイス・フェルナンド・「マッチョ」・カマーチョも立候補を表明した。カマーチョはサンタクルスの新経済エリートの裕福な家族の一人であり、彼の家族の資産は保険、アグリビジネス、それと天然ガス配給で成したものである。2006年から2008年にかけての分離主義者の反乱の際に、サンタクルスで先住民の人々を公然と殴打し、屈辱を与えたことで知られている原始ファシストの青年民兵組織であるフベニル・クルセニスタ連合の元指導者として、彼は極右と深く結びついている。

 また、モラレスの辞任を要求するために大統領官邸へ入った時、ボリビア国旗の上に聖書を置いたことで有名になった生まれ変わったクリスチャンであるカマーチョは「ボリビアのボルソナロ」と言われている。政治アナリストのパブロ・ステファノニとフェルナンド・モリーナは、不正選挙に対する中流階級の地域的な抗議行動を先鋭化させ、全国的な警察・市民・軍のクーデターへと導くことに成功したのは、彼の「聖書と舞踏会」の攻撃的な組み合わせだったと述べている。その過程で、メサのより穏健な中道右派は完全に影が薄くなってしまった。

 カマーチョは、反体制派のジャンガス・コカ栽培者、坑夫、運輸労働者やいくつかの農民組織をも含めてモラレスに対する不満を蓄積してきた異種の大衆層にも手を伸ばし、協定を結ぶことによってかなりの政治的スキルを証明している。中でも注目すべきは、彼が指名した副大統領候補は、この地域で最近の反モラレス抗議行動だけでなく、ポトシでリチウム採掘を巡って永年の大衆闘争を率いてきた先住民の坑夫の息子マルコ・プマリなのである。

 「尊厳、自由と民主主義のある統一ボリビア」のための14の綱領を携えて、カマーチョ=プマリ候補が大きなファンファーレと共に大晦日に発表された。彼のエリート主義、報復主義的ルーツを欺く東西の大衆的な統一というイメージだけでなく、カマーチョの人種差別的な歴史に対する強力な解毒剤を提供し、広範にアピールする可能性を秘めている。

 それでも、この同盟は始まる前から自己崩壊しそうになっている。カマーチョとプマリは最初に自分たちの政治的願望を否定した後、11月末に共同候補者になるお互いの利益を共有した。2週間後、カマーチョが現金と大臣の割り当てという形でかなりの支払いを要求したとプマリを非難したことで、このパートナーシップは壊れた。この会話はソーシャル・メディアとCNNにリークされた。バラバラに立候補することにお互い合意した。

 数日後、カマーチョはワシントンDCでOASの首脳ルイス・アルマグロと会談した。かれは「民主主義の約束」を歓迎していた。翌日、DCを拠点とするシンクタンク、インターアメリカン・ダイアログでゲスト講演したが、そこで活動家組織コード・ピンクが彼とそのイベントに抗議した。2週間後、その同盟は公式に復活した。

 暫定大統領アニェスは反MAS票の統一を野党の首脳陣に呼びかけた。おそらく彼女はカマーチョの背後にいて、密接な政治的関係を持っている。ある意味では、アニェスが宣誓式の後、バルコニーに2人組の側に現れた時、カマーチョ=プマリ同盟は文字通り大統領宮殿で結ばれたのである。

 まだゲームの序盤ではあるが、最近の世論調査ではMAS党はまだ候補者が決まっていないが21%で第一位であり、アニェス(出馬の意志を否定している)が16%、カマーチョとプマリのコンビ(調査の時点ではバラバラに立候補することになっていた)は16%、メサが14%となっている。それでも2回目の投票シナリオではMASに投票すると答えたのは24%だけで、47%が野党候補に投票すると答えている。

 新しく資格を持つ有権者が追加更新されるので、昨年10月の選挙でおおよそ3分の1を占めた若者の投票は今回非常に重要になる。かなりの数の若者が10月にはモラレス反対に転じ、いわゆる「ピティタス革命」に参加した。それはモラレスが嘲笑した、初心者の抗議によって道路を横切って張られた仮設コードにちなんで名付けられたものである。

 カマーチョはこの層にかなりアピールしている。この層はソーシャル・メディアによる影響を強く受けやすく、操縦されやすい。IACHRは、カマーチョとアニェスを支持する100万以上のツイートを生み出した、11月9日から17日の間に作られた6万の偽ツイッター・アカウントを特定した。それでも、クーデターはエル・アルトのようなところでは若者の間に戦闘的なMAS支持者を復活させた。彼らは以前には両親や祖父母の闘いから遠ざけられていた。

 人類学者のニコレ・ファブリカントが主張したように、選挙までの期間にアニェス政権によって栄養を与えられ元気づけられた、優位に立っているボリビアの右翼勢力を打ち破るためには、歴史的な親・反モラレスの分裂を横断する左翼=先住民の幅広く団結した戦線が必要である。MASがモラレスから独立した立候補者を選定することは大衆的な野党支持層にアピールすることに役立つ可能性がある。アニェス政権の虐待に関して驚くほど沈黙してきた反モラレス左翼が、事実上の政府の下で起きている民主主義の崩壊や政治的迫害、人種差別的な言説に対して立ち上がることは和解に向けた長い道のりを進むことを可能とする。


Emily Achtenbergは都市プランナーで、NACLAの編集委員会のメンバーであり、ラテンアメリカの社会運動や進歩的政府をカバーするNACLAのレーベル・カレント・ブログの書き手である。

原文URL:

https://nacla.org/blog/2020/01/10/mas-party-under-threat-bolivia-new-elections-without-evo

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趣旨

今、ラテンアメリカでキューバを先頭とする社会主義、ないし社会主義を志向する大衆闘争が注目です。特に、昨年末(2015年)アルゼンチン、ベネズエラで右翼が勝利し、米国に支援された反動右翼と進歩的な人民大衆との熾烈な階級闘争が繰り広げられています。日本のマスコミは歪められたものしか報道していません。 だからこそ今、目の前で闘われている大衆闘争について現地の報道機関やブログで報道されているものを日本語にして日本の労働者に紹介していくことは、国際連帯としても日本での民主主義を闘いとる闘争にとっても有意義なことであるように思います。

おことわり

このブログでは英文記事を翻訳してご紹介しておりますが、筆者はかなずしも英語に堪能であるわけではありません。 従って、多々誤訳等があるかと思いますが、ご容赦願います。

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