ベネズエラ:米国の制裁に対する人民の抵抗

  • 2019.08.26 Monday
  • 06:31

この記事では米国の制裁に対抗して食糧主権を確保する闘い、そしてそれを支援するキャンペーンが紹介されています。ベネズエラ連帯活動にはこのような寄付もあります。ベネズエラアナリシスの記事から。


ベネズエラの抵抗として食糧主権を支援する

Supporting Food Sovereignty as Resistance in Venezuela

2019年8月24日 venezuelanalysis(By Christina Schiavoni - Venezuelanalysis.com)発

クリスチナ・シアボニが、危機に抵抗し、食糧主権の方向へ組織しようとしている幾つかの草の根の取組に注目する。

The Pueblo a Pueblo initiative has linked organized rural and urban communities to provide food at fair prices. (Christina Schiavoni)

適正な価格で食料を提供するために農村と都市を結びつけた『人民から人民へ』の取組。|写真:Christina Schiavoni

 

 ベネズエラの破滅的な経済危機は、人民の食糧入手に相当の影響を与えている。危機を複雑化し、どんな解決をも妨害してきた米国の制裁は特にベネズエラ国民の食料に対する権利を攻撃し、商品輸入のハードルを高くし、食料補助プログラムであるCLAPをも標的としてきた。

 この記事では、食糧主権の活動家クリスチナ・シアボニが近い将来食糧主権によって食料の入手を保証する幾つかの草の根の取組に注目している。彼女はまた、短期および長期の両方の取組を支援するこれらの組織と協力するキャンペーンを開始した。

 

【ベネズエラの穀倉地帯を支配する】

 南ブロンクスの都市農家アブ・タリブが、「穀倉地帯を支配するものが運命を支配する。」という言葉を度々口にする。食糧主権に関するもっと良い説明、あるいは、自分自身で食料を栽培し、根本的に違ったように見える食料制度の生きた実例を通じて自治を作り上げようとする、タリブや世界中の無数の人々の取組以上のものを私は考えることができない。

 北アメリカの食糧主権の活動家として、14年間ベネズエラに焦点を当てて研究して来たが、その刺激を受けた中に、これまで注目してこなかった食料システムを転換する取り組みが急成長していることがあげられる。永年私は、都市農場、水産養殖プロジェクト、たい肥化の取組、コミュニティ・キッチン、ファーマーズマーケットから農村協同組合、コミュニティ経営の加工工場、生物学的害虫駆除研究所、農業生態学の学校や漁業構想に至るまで、これらの幅広い様々な取り組みを目撃する栄誉に浴して来た。

 世界の多くの隅々で見かけることができる取組であるが、私が最も興味を持ったことは、ベネズエラにおいては、国内の食料供給を強化することによってすべての人々の食料に対する権利を保証する支援政策の枠組みによって促進されて来た事である。食糧主権を防衛する国家政策は14年前にはほとんど聞かれることはなく、今では指摘する事例は増えているものの、比較的少ないままである。

 ベネズエラの食糧主権の経験は多くの懐疑論に出会っている。すなわち、世界最大の石油埋蔵量を持つ国が何故農業に関心を持つのか?答えを求めるために歴史をさかのぼることは必要ない。米国が「経済的悲鳴をあげさせる」と誓ったアジェンデの下でのチリの作られた商品不足から、「特別な時期」にキューバを突き落とした今も続く輸出入禁止まで。米国の外交政策の一つとして食料の武器化にラテンアメリカは不慣れではない。ベネズエラでは、1999年のバリバル革命の開始時には食料の80%以上を輸入しており、そのほとんどが米国からであり、危険度は特に高かった。独立した食糧供給を確保できるか、できないかはすぐに生と死の問題となる。

 このことは今日ではベネズエラの良く知られた穀倉地帯を誰が支配しているかという問題に行きつく。私や他の人がどこかで書いているように、このことは、植民地化の過程で作り上げられ、後には石油ブームを通じて、そして近代化と新自由主義改革の時代に強化された依存性の様式、それによって一握りの強大な会社がベネズエラ人の食料の圧倒的大多数を支配するようになったことを追跡することになる。現在の食料不足が感じられるようになった2013年までは、ベネズエラの食料制度は改革されたというには程遠かった。いくつかの見込みのある食糧主権の取組は進行中であるが、不均一で不完全だった。順調に進んだものもあれば、さまざまな理由でうまくいかなかったものもある。

 最も根源的には、既存のシステムの中で新しい食料システムを作り上げることは易しいことではない。そして、新しいものを作り上げるだけでなく、古いものを解体することでもある。間違いなく関連する既得の利害関係を考えればずっと難しい。さらに、強化するサイクルにおいても、輸入のために必要な外貨を稼ぐ石油輸出の最大の仕向け地は米国のままだった。

Pueblo a Pueblo food distribution event in El Valle, Caracas. (Christina Schiavoni)

カラカス、エル・バジェでの『人民から人民へ』の食料配給イベント。|写真: Christina Schiavoni

 

【政権交代に飢えているのか?】

 ベネズエラを外交的、経済的に孤立させようとしている米国の企ては体制転覆を目的としていることには少しも疑問の余地がない。一方的な制裁がマドゥーロ政府だけを傷つけているという主張にもかかわらず、実際にはベネズエラの住民への「集団的懲罰」ということになっている。メディアの派手な注意を集めることがなかったマーク・ウエイスブロットとジェフェリ・サックスによる経済政策研究センターの報告によれば、ベネズエラに対して米国が課した制裁は、2017年8月以降で少なくとも4万人の死者に責任がある。これは8月初めの基本的に全面的な輸出入禁止を意味するホワイトハウスによる最新の行動以前のことである。

 多分、ほぼ完全にひねくれたことは、そして最も関心を寄せていると口にしていることは、国は運営している食料配分プログラムCLAPを標的とした制裁だということであり(CLAPは基本的な食物を詰めた補助付きのフードボックスの配給)、それは現在の封鎖に直面しているベネズエラ国民の大多数のライフラインとして機能しているものである。

 ベネズエラ国民を餓死させようという米国政府の意図は痛々しいほど明らかだが、ベネズエラ現地の、特に食糧主権分野における、ものすごい抵抗のレベルを過小評価しているように見える。これはボリバル革命を築き上げた、すでに述べた取り組みだけでなく、危機に直面する中で、短期的には自分自身の食料調達と長期的にはより素晴らしい自治を建設するためのコミュニティを組織するという新しく生み出されたものの両方の形を取っている。

 これらの中の力強い実例に『人民から人民へ計画』がある。これはベネズエラの田舎の小規模農家を都市の組織されたコミュニティと結びつけることによって分断された都市と農村に橋を架け、数万の家族へ新鮮な生産物を届けようというものである。今年の2月23日、高度に政治的狙いを持った米国の「人道援助」をベネズエラへ持ち込もうとしたその日、『人民から人民へ』は30トンの新鮮な生産物をベネズエラの農村地帯からカラカスの家族へ届けた。

 『人民から人民へ』のような取り組みは、ほとんど計り知れない障害に直面しながら、予算が不足している中、集団的な取り組みと組織のおかげで膨大な作業に取り組んでいる。彼らは、自ら直接課題に取り組みながら、現在の経済的課題への対応策を提供し、自動車部品、農業投入物、硬貨などの不足のかじ取りをし、インフレスパイラルに直面する中、農民にとっての公正さと消費者にとっても手ごろな価格を同時に維持する取り組みを行っている。最も緊急を要することは、次期の穀物の種まきする農民の種子が不足していることが『人民から人民へ』の運営を直接脅かしていることである。差し迫った需要を満たすために、100ポンド以上の種子を必要としている。

The native Andean potato was displaced by the imported variety but has progressively been rescued. (Vertientes de Agua Viva)

土着のアンデス・ポテトが輸入品種によって置き換えられたが、徐々に救い出されて来た。|写真:Vertientes de Agua Viva

 

【抵抗の種を蒔く】

 普通のベネズエラ国民の生活を、悲劇的に、すでに主張通り直接脅している米国の攻撃に直面して無力を感じることは容易いが、我々にはできることをする、特に米国内に住んで我々には道徳的義務がある。制裁や野党に資金援助するやり方を非難することに加えて、我々は積極的に抵抗している組織に支援することもできるし、食糧主権を構築しながら食料調達を行っているコミュニティを援助することができる。

 これが、私が『人民から人民へ』や同じように重要なその他の3つの組織と提携し、彼らの取組を支援する草の根の資金集めを立ち上げた理由である。その他の組織にはアンデス地域の『水源ビバ協働組合』(Vertientes de Agua Viva Cooperative)、ジャノス地域の『エル・バランコ小規模農業学校』(Conuco-Escuela El Barranco)とアマゾニアン地域の『先住民学生農業構想』がある。

 メリダ州アンデスにあるガビディア村の『水源ビバ協同組合』のメンバーたちは、商業的に輸入された種子に替わるものとして在来種子生産のパイオニアである。10年以上にわたり、彼らは先祖が栽培したアンデスの在来のジャガイモやその他の食品を救い出すことに懸命に取り組んできた。それらは時間が経つに連れて、輸入された商業品種のためにほぼ無くなりかけていた。現在の食料と投入物(肥料など)の不足の中にあって、ガビディアや救出された品種を栽培しているその他の農業コミュニティにとって、土着のジャガイモはますます食料と収入の重要な源泉となっている

 しかし、彼らが生産に依存している有機肥料価格の激しい高騰によって、今年、彼らは新しい困難に直面している。国際的な友人への緊急電話によって、『水源ビバ協同組合』は今年のジャガイモの収穫に必要な最低限の肥料の購入が可能となったが、それはただの一時しのぎでしかない。それ故、彼らは、生産により多くの家畜をまとめることによって彼ら自身の地元の有機肥料を作ることを計画している。この資金集めがそれを可能としているように見える。

El Conuquito del Barranco in Lara State looks to produce, save and distribute seeds. (Conuquito del Barranco)

ララ州の『エル・コヌキート・デル・バランコ』が種子の生産、保存と配布を検討している。|写真:Conuquito del Barranco

 

 種子を入手しようとしている『人民から人民へ』の農家や有機肥料を入手しようとしている在来品種のジャガイモ農家の苦境は、種を生産、保存、分配し、さらに都市の農村の両方の生産者に自家製の有機肥料を作るという『エル・バランコ小規模農業学校』や『コヌキート・デル・バランコ』の活動の重要性を強調している。種子は現在ララ州のフモカロという農村コミュニティを拠点としたこのサイトで増殖させており、そこには様々なサラダや調理用野菜だけでなく、トマト、香菜もあり、小規模な家畜の飼育も併せてその他の作物の数も増えつつある。

 また、自然肥料や殺虫剤用の微生物を生産する「生きた実験室」の設立も進行中である。この国の様々な地域の農家を支援するというゴールに加えて、『コヌキート・デル・バランコ』は農業生態学の実践を共有するコミュニティの拠点という役割を果たしている。支援の注入により、

『コヌキート・デル・バランコ』は不足に直面する中で回復力や自給自足を高めながら、輸入種子や肥料から農家を引き離すことを助けられることを願っている。

 最後に、ボリバル州アマソニアンにある先住民族大学で、ある学生グループが5つの先住民族コミュニティ、『ウウォツファ』、『ヒビ』、『エニェパ』、『ワラオ』と『ペモン』を起源とする先祖伝来の栽培方法を取り戻すことに注力している。彼らの取組は大学の学生経営農場を巻き込んでいる。この農場は学生の食料調達だけでなく、学習ツールや学生がそれぞれのコミュニティを率いることになるコミュニティを拠点とした統合農場プロジェクトとしても役立っている。

 これらのプロジェクトは大部分が自給自足であり、この国の他の地域の農家によっては重要なモデルとはなっているが、マチェーテという基本的なツールや生産に不足しているずだ袋などの

資材はとてつもなく高価になってしまった。ツール、資材および学校からコミュニティへの学生の移動のための僅かな資金の援助であってもこれらのプロジェクトが持続できるように支えることはできるだろう。これは学校だけでなく、5つのコミュニティの食糧主権を支えることになり、より広範な食糧主権の組織化のために基準としても役立つものとなる。

Corn is one of the staples of the Venezuelan diet and there have been efforts to rescue the native varieties. (Christina Schiavoni)

トーモロコシはベネズエラ人食生活の主食の一つであり、在来種を救い出す取り組みが行われて来た。|写真:Christina Schiavoni

 

【国際行動の呼び掛け】

 残念ながら、現在ベネズエラに課されている致命的で違法な制裁の体制に対抗できるほどの十分な寄付は無い。この制裁には我々はあらゆる可能な手段で反対する必要がある。同時に、ボリバル革命には、特に危機の時代に、自分たち自身の運命を切り開くためにコミュニティの組織化の実例が一杯ある。これらの草の根の取組を支援することは国際連帯の義務でもある。

 この資金集めキャンペーンは、金融封鎖の最悪の影響を幾分か和らげることに役立つだけでなく、長期の食糧主権を構築という形で現地での積極的な抵抗にも貢献しようと立ち上げられた。それはまた、理解しがたい勝機に対して信じられない程に活動を行っているベネズエラのオルガナイザーや活動家に、あなた方は孤立していないということを示すために立ち上げられた。

 私が書いている時に、ニューヨークのアルベルト・ロベラ・ボリバル・サークルが組織した連帯代表団がベネズエラに到着し、このキャンペーンやその他を通して購入した種子を直接ベネズエラのパートナーに手渡した。写真や新しい情報はこのキャンペーン・サイトで間もなく公開されます。できる範囲で寄付をお願いします。そして、このキャンペーンと下記のメッセージの両方を広げてください。

制裁を止めろ!

食料を武器にすることを止めろ!

今こそ、食糧主権を!

(N)

寄付はここで出来ます。

https://www.gofundme.com/f/help-venezuelans-feed-themselves

 

この記事に表明された見解は著者自身のものであり、必ずしもベネズエラアナリシスの編集スタッフの見解を反映したものではありません。

原文URL:

https://venezuelanalysis.com/analysis/14635

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  • 2024.03.26 Tuesday
  • 06:31
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    コメント
    素晴らしい記事です。今後ともご健闘を願います。出来るだけの協力をしたいと思っています。
    • yamamura noboru
    • 2019/09/28 7:19 PM
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    趣旨

    今、ラテンアメリカでキューバを先頭とする社会主義、ないし社会主義を志向する大衆闘争が注目です。特に、昨年末(2015年)アルゼンチン、ベネズエラで右翼が勝利し、米国に支援された反動右翼と進歩的な人民大衆との熾烈な階級闘争が繰り広げられています。日本のマスコミは歪められたものしか報道していません。 だからこそ今、目の前で闘われている大衆闘争について現地の報道機関やブログで報道されているものを日本語にして日本の労働者に紹介していくことは、国際連帯としても日本での民主主義を闘いとる闘争にとっても有意義なことであるように思います。

    おことわり

    このブログでは英文記事を翻訳してご紹介しておりますが、筆者はかなずしも英語に堪能であるわけではありません。 従って、多々誤訳等があるかと思いますが、ご容赦願います。

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