経済制裁の戦利品

  • 2019.06.10 Monday
  • 05:53

経済戦争の戦利品:ベネズエラとイランに対する制裁から米国とサウジはどのように利益を得ているのか

The Spoils of Economic War: How the US, Saudis Profit From Sanctions on Venezuela and Iran

2019年6月6日 teleSUR(By teleSUR / Juan Fernando Teran)発

石油利益を操作すること、エネルギー市場を分割すること、同盟を有利にすること、そしてドルを支えることは、ベネズエラとイランを制約することから得られる米国の利益の一部である。

 

 米国は世界経済のいじめっ子の役割を果たしてきた。これまでのところ、米国はアフガニスタン、ブルンジ、ミャンマー、キューバ、北朝鮮、中国、キプロス、ハイチ、リビア、レバノン、ベラルーシ、クリミア、エリトリア、イラン、イラク、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ロシア、シリア、ソマリア、スーダン、南スーダン、ウクライナ、ベネズエラ、イエメンとジンバブエに対して制裁を課した。

 しかしながら、一方的な嫌がらせが従来の地政学的な目標を達成するために歴史的に効果の無いものであることが証明されて来たのに、何故、米国はベネズエラとイランに対するイジメを主張しているのか?

 戦争を拡大する戦場として使われた一つの産業である国際的な石油市場の政治経済を一目見れば、ドナルド・トランプ大統領が一見不合理な領域に向かって進めてきた米国外交政策のヒントがある。

【米国のエネルギー的自立には市場を操作することを必要としている。】

 国際市場が非常に投機的であるので、多くの人は価格動向を操作することはできないと信じている。しかしながらそれは正しくない。エネルギー産品と戦略的原材料が関係する時、米国は辛抱強く価格受容者として座っているのではなく、価格形成者としてサイコロを投げる方を好む。

 2006年から2014年の間に、中国の経済ブームが国際的な一次産品の需要を高めた時、数年後に逆説的ではあるが米国を有利にする構造的な変化が起きた。第一に、高い石油価格は水圧破水(シェール)産業に財政的な存続可能性の選択肢を与えた。

 これは、今度は米国が30年間経験してきた依存関係を徐々に克服することを助け、2016年には1日に約1200万バレル(bpd)もの貪欲な食欲を持つ世界最大の石油輸入国とした。

 2018年12月には、75年振りに米国は「テキサス州とニューメキシコ州のパーミアン地域からノース・ダコタのバッケンやペンシルベニア州のマーセラスに至る数千の井戸」のおかげで純石油輸出国になったとロスアンジェルス・タイムスが報道した。

 「我々(米国)は世界で支配的な勢力になりつつある。」と戦略エネルギー・経済研究所代表ミッチェル・リンチが話している。

 トランプはエネルギー自立という果実、彼が全く貢献していない条件を刈り取ろうとしている。このエネルギーの潤沢さは壊れやすい。何故なら、それを維持することはできるだけ高い石油価格を維持することに掛かっているからである。

 それゆえ、これを強要すること、ベネズエラとイランの輸出を封鎖することを含めて、国際的な石油供給を減少させようと脅すあらゆることは米国にとって実際に良いことなのである。

 そして、それだけではない。

 

 【もし、パイを増やすことができなければ、分割されたものをしっかり管理せよ。】

 米国には今、蓄積している一部を輸出する余裕があるが、トランプの祖国は世界のエネルギー需要を完全には満たすことはできない。これはベネズエラとイランに対する経済的制裁から利益を得ることも可能なサウジアラビアやその他の同盟諸国にとってビジネスチャンスを開いている。

 米国がペルシャ湾の国に対する新しい制裁を適用し始めた2018年春以前は、イランは日産300万バレル(bpd)の生産と輸出を行うOPEC第2の国だった。しかし、その時以来石油生産は100万bpd以上減産している。

 ベネズエラでは、米国の外交政策は同様の結果を達成した。すなわち、2018年2月と2019年4月の間に、ボリバル共和国の平均的な石油生産量は150万bpdから110万bpdに減少した。それは2006年の生産レベルのほぼ50%である。

 これらの複合された結果は国際的な石油供給の縮小傾向を引き起こしている。それは近い将来にリビアの内戦によって120万bpdの更なる削減が加われば、もっと悪くなる可能性がある。

 それにもかかわらず、国際石油機関(IEA)のデータによれば、国際的な供給は国際的な需要を満たしており、約995万bpdの変動があるので、石油市場の見えない手では米国が是が非でも必要とする高価格を維持するには十分ではない。

 これだけでは変わらない。世界の経済成長は容易には石油需要における新しいブームに繋がりそうにない。反対に、米国の中国に対する貿易戦争やBrexitのような要素は世界全体の成長見通しを低下させる可能性がある。

 石油需要が多かれ少なかれ固定されたこの状況では、ベネズエラとイランをビジネスから追い出すことは各国が得られるパイの割合を変える。そしてもちろん、幸運な人だけが石油市場の分け前を享受することができる。中でもサウジアラビアはより多くの顧客を獲得し、OPECの約束を破ることなく石油生産を拡大することができるようになるのである。

 原油価格はすでに米国の政治的に動機づけられた供給不足に対応している。平均的な原油スポット価格は、1月の1バレル当たり56US$から、5月には67US$へと16%も値上がりしている。これは2月にベネズエラに生産量の50%以上の販売を阻止した制裁なしには可能ではなかっただろう。

 確かに、国際原油平均価格は1バレル当たり100US$を下回ったままであるだろうが、現在の不安定に均衡した価格は、米国の国内外の化石燃料ビジネス会社を維持するには十分である。この操作の短期的な犠牲の一つは価格の不安定性である。しかしながら、トランプ政権はそのような偶然性を吸収しているかのように見える。国際的な安定性が米国の外交政策の優先順位の一つであったことはない。

 実際にそれを見てみると、ベネズエラとイランを攻撃したマイナスの結果は、非常に儲けた利益、1日200万バレルの石油を上回る。

 「米国は現在、イランとベネズエラの産業への制裁を通して国際的な供給から約1日200万バレルを排除している。しかし、ワシントンは、米国の石油生産が急上昇し、1日1200万バレルという史上最高レベルにあることから、国際的な市場供給を維持し、価格を抑えることを望んでいる。」と5月5日にロイターが伝えている。

 供給と需要に関する政治的操作は危険な利潤追求ゲームである。そしてこれはトランプのパーソナリティが重要な役割を果たすことができる分野である。彼はリスク回避型のプレーヤーではない。これまでのところ、彼には経済戦争から生じる付随的な損失には関心がないようだ。

 そのうちの一つは、米国の制裁が「価格が上昇することによって石油生産者が助けられる事、そしてロシアが最も重要な石油生産者の一人となる」ことであると、バラク・オバマ大統領の元中東補佐官ロバート・マーレイが話したとRIAノボスティが報道している。

 我々はもはや「古き良き世界」には住んでいない。そこでは米国の地政学は最も有効的な供給者から安価な天然資源の流通を保証しなければならなかった。

 「このような訳で、逆説的に、米国の領土に近い地域的な生産危機が中期的には米国にとって良い可能性がある。」とジャンカルロ・エリア・バロリが『戦略地政学』に書いて、「米国が原油価格の上昇を完全に支持しており、それ故、間接的にベネズエラにおける緊張を支持している。」と述べている。

 

【「全能」のドルは石油からの支援を得るが、品位を損なうだろう。】

 トランプは至るところで戦線を開いているが、それらは注意を逸らすものでない限り意味を持たないように見える。しかし、そうではない。

 世界勢力としての中国の勃興は静かに国際的な貨幣システムを変更しており、新たな要素が際限のない経済的いじめへと米国を引き込んだ。

 1971年の金本位制の放棄以来、米国ドルはどんな価値あるものともリンクしておらず、不換通貨となっている。このような場合、長期的に通貨を支えることができるのは国の生産力だけである。しかし、生産性の拡大よりも通貨膨張がより急速に発生すると何が起きるのだろうか?

 ずっと昔に作られた「我々は金を信頼する」というモットーに新しい意味合いを付与するためには、ドルの価値が国際準備通貨であることを維持するその能力にかかっている。つまり、他の国々が外貨準備として保有し、国際決済に使用する通貨である。

 経済的主体が紙幣を金あるいはその他の物理的な価値あるものへの変換を連邦準備制度に要求しない世界では、信任が唯一米国の公正を維持させるものである。結果として、ほとんどの国際決済が米国ドルで取引されているので、ドルは強力な通貨であり続けている。

 1月30日に国家安全保障補佐官ジョン・ボルトンは、実際に、ベネズエラでのクーデターの試みが石油資源を奪取することが本当の目的であると露骨に認めた時、彼はほんの僅かしか明らにしなかった。実は、米国の攻撃はそれ以上にはるかに多くのものを隠していた。

 もし、ドルが世界で最も取引の多い通貨でなくなると、2017年の6,660憶US$から2018年の7,790憶US$へと増額させたほぼ50年の連邦負債額の調達に必要な紙幣の発行ができなくなるだろう。

 「米国の年間の財政赤字は毎年の収入よりも連邦政府支出がどれほど多いかである。2020年の米国財政年度財政赤字は1兆1千憶US$となると予想されている。」

 「それは2012年以来最大の赤字である。」とキンバリー・アマデオが『ザ・バランス』に書いて、トランプ大統領が記録的なレベルの軍事支出に支払うために米国の赤字を拡大していると指摘した。

 ドルが好まれた通貨としての地位を失うことは、1976年以来の貿易赤字となっている国際競争力が欠如した経済における輸入品の支払い問題を米国にもたらす。貿易赤字は3月には500憶US$に拡大した。

 最後に、ドルが全能であることを止めると、米国は世界のファーストクラスとしての自身を維持することが難しい時期を迎えることになる。何故ならその連邦負債は2月には22兆US$を突破したからである。この額は米国の1年間の生産可能額の70%以上に相当する。それにもかかわらず、これはもっと悪化しそうだ。議会予算局によれば、2049年までに米国の債務GNP比が150%に拡大すると予測されている。

 ベネズエラとイランの天然資源の輸出を妨害するだけでなく、過去の帝国の歴史がすでに示しているように、今後数年間で不可避となるドルの崩壊を避けようと米国は必死になっている。

 これが、トランプ政権が物々交換、仮想通貨あるいはその他の支払手段の使用と闘おうとする理由である。

 米国の制裁はこの大統領の気まぐれな表現ではない。それらもはやそのような強い願望を許容しない多極的な世界の中で覇権的な権力であり続けるためのツールである。米国のいじめの中心にあるものはイデオロギー的な不一致でなく、経済的な衰退である。(N)

動画:米国の制裁は沢山のベネズエラ人を殺している

原文URL:

https://www.telesurenglish.net/analysis/The-Spoils-of-Economic-War-How-the-US-Saudis-Profit-From-Sanctions-on-Venezuela-and-Iran-20190606-0016.html

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趣旨

今、ラテン・アメリカでキューバを先頭とする社会主義、ないし社会主義を志向する大衆闘争が注目です。特に、昨年末(2015年)アルゼンチン、ベネズエラで右翼が勝利し、米国に支援された反動右翼と進歩的な人民大衆との熾烈な階級闘争が繰り広げられています。日本のマスコミは歪められたものしか報道していません。 だからこそ今、目の前で闘われている大衆闘争について現地の報道機関やブログで報道されているものを日本語にして日本の労働者に紹介していくことは、国際連帯としても日本での民主主義を闘いとる闘争にとっても有意義なことであるように思います。

おことわり

このブログでは英文記事を翻訳してご紹介しておりますが、筆者はかなずしも英語に堪能であるわけではありません。 従って、多々誤訳等があるかと思いますが、ご容赦願います。

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